株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

腟トリコモナス症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
野口靖之 (愛知医科大学産婦人科学講座特任准教授)
    • 1
    • 2
  • next
  • ■疾患メモ

    性交を介してトリコモナス原虫(Trichomonas vaginalis)が男女の生殖器に感染し,発症する性感染症である。女性では,腟や尿道だけでなくバルトリン腺,スキーン腺に感染するため,これらを総称して腟トリコモナス症と呼ぶ。

    罹患者は若年層だけでなくしばしば中高年者にもみられ,他の性感染症と比べ年齢層の幅が広い。一方で,性交経験のない女性や幼児にも感染例があり,稀ではあるがタオルや便器,浴槽を通じて感染すると考えられる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    初発症状は,性交渉後10日前後で出現する。ミルクを流したような悪臭の強い多量の泡沫状黄緑色の帯下,外陰部の強いそう痒感,腟壁の発赤が代表的な臨床症状として挙げられる。しかし,これらの自覚症状は多様であり,無症候性感染者が20~50%存在する。

    【検査所見】

    腟分泌物の生鮮標本を鏡検することで容易に診断が可能であり,本疾患を疑ったら積極的に鏡検を行う(診断率は60~70%)。トリコモナス原虫は,白血球より大きい楕円形あるいは梨形を呈し,生鮮標本では特有の鞭毛運動や遊走運動を認める。また,帯下中のトリコモナス原虫が少数であると鏡検で確認できないことがある。

    臨床的に腟トリコモナス症が疑われるにもかかわらず,鏡検でトリコモナス原虫が検出されない場合は,トリコモナス選択培地による検出を試みる。さらに,腟鏡診において粘液膿性子宮頸管炎(mucopurulent cervicitis:MPC)である粘液膿性の子宮頸管内膜滲出液と易出血性の子宮腟部所見が認められれば,核酸増幅法を用いてクラミジアまたは淋菌性子宮頸管炎との鑑別を行う。

    1190疾患を網羅した最新版
    1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中


    PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
    コチラより

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    page top