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突発性難聴

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-25
小川 郁 (慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科教授)
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  • ■疾患メモ

    厚生労働省特定疾患急性高度難聴調査研究班による約10年ごとの疫学調査では,突発性難聴の罹患率は30人/10万人と10年前に比べて1.5倍に増加している。50~60歳代に多いが,若年者から高齢者まで広く罹患する。性差はない。

    突然発症する原因不明の感音難聴が突発性難聴と定義されており,現時点では原因の明らかな疾患を除外して診断される症候群ととらえるべきである。蝸牛循環障害やウイルス性内耳炎が最も有力な原因と考えられているが,最近では細胞内ストレス制御機構の異常亢進など新しい病態も提唱されている。しかし,いずれの説にもいまだエビデンスはない。

    突発性難聴の約40%が治癒,約40%が何らかの改善を示し,約20%では難聴の改善がない。予後不良例としては①発症後2週間以上の症例,②発症時平均聴力レベルが90dB以上の高度難聴例,③回転性めまいを伴う症例,④糖尿病の合併例,⑤高齢者,などが挙げられる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    主な症状は突然発症する高度感音難聴で,原因不明である。2015年改訂厚生労働省難治性聴覚障害に関する研究班による診断基準をに示した1)

    18_22_突発性難聴

    突発性難聴と鑑別すべき疾患としては,メニエール病や急性低音障害型感音難聴,急性音響性難聴,外リンパ瘻,聴神経腫瘍,ムンプス難聴や梅毒性内耳炎などがある。これらの疾患は必ずしも初診時に鑑別ができるわけではなく,突発性難聴に準じた治療を開始しながら鑑別を進める。

    【検査所見】

    鼓膜は正常であり,外耳道にも異常を認めない。

    原則として鈍音聴力検査で一側性の感音難聴(隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴)を呈する。

    診断基準から急性低音障害型感音難聴を除外,他覚的聴力検査法で機能性難聴を除外できるような異常所見が認められる。

    特にめまいを合併する場合は,健側向きの眼振(麻痺性眼振)が認められる。

    頭部MRIなどで中枢性の異常を認めない。

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