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フォークト─小柳─原田病

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-24
竹内 大 (防衛医科大学校医学教育部医学科眼科学教授)
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  • ■疾患メモ

    フォークト(Vogt)─小柳─原田病は,全身のメラニン関連蛋白に対する自己免疫病と考えられ,眼以外にも中枢神経系,聴覚系,毛髪,皮膚に異常がみられる。

    フォークト─小柳─原田病の国際診断基準が2001年に報告された。に示す所見の有無により,完全型,不完全型,疑い型に分類される。

    17_33_フォークト─小柳─原田病

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    臨床症状には,前駆期,眼病期,回復期,慢性再発期がある。

    〈前駆期〉

    前駆期には,頭痛(49%),光視症(48%),耳鳴り(36%),頸部硬直(33%),聴覚障害(32%),全身倦怠感(21%),軽度の感冒様症状(17%),嘔吐(13%),またこのほか,頭髪の知覚過敏や違和感などがある1)2)。前駆症状発症後,3~5日ほどで眼症状が出現する。

    〈眼病期〉

    眼症状では70%が両眼の霧視を訴えるが,片眼発症後,数日遅れて他眼に症状がみられることもある。両眼性の後部肉芽腫性ぶどう膜炎,主に脈絡膜炎を呈し,眼底検査にて多発性の胞状漿液性網膜剥離がみられる(図1a)。前房内および硝子体内細胞浸潤はみられないこともある。

    17_33_フォークト─小柳─原田病

    〈回復期〉

    眼炎症が沈静化すると回復期となる。しかし,眼所見には現れなくてもサブクリニカルな炎症が持続していることがあり,眼では80%以上に角膜輪部色素の脱失による杉浦徴候,60~90%に網膜色素上皮,脈絡膜の色素脱失による夕焼け状眼底(図1b3),局所の網膜色素上皮の集積病巣,および消失による白色萎縮病巣4),視神経乳頭周囲の萎縮病巣5),外表では皮膚の白斑,眉毛,睫毛,頭髪の白髪などがみられる2)

    〈慢性再発期〉

    適切な治療が施されなかった場合に多く,豚脂様角膜後面沈着物,虹彩結節を伴う肉芽腫性前部ぶどう膜炎を呈する。漿液性網膜剥離を伴うことは稀であるが,虹彩後癒着,併発白内障,緑内障を合併し,脈絡膜新生血管,脈絡膜線維増殖などをきたすこともある。

    【検査所見】

    以下の検査所見が診断の決め手となる。

    腰椎穿刺:眼症状発現後,リンパ球優位の髄液細胞増多がおよそ8週までみられる6)

    超音波:脈絡膜肥厚像を呈する。

    HLA class Ⅱ検査:ほとんどの症例でHLA-DR4が陽性である7)。しかし,日本人の25%がHLA-DR4陽性者であることから,わが国での特異性は低い。

    フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA):造影初期から点状の蛍光漏出が多発性に現れ(図1c),拡大癒合するとともに,造影後期には漿液性網膜剥離領域に一致した蛍光貯留を呈する(図1d)。視神経乳頭も過蛍光となる8)

    インドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyanine green angiography:IA):脈絡膜の閉塞性血管炎による局所性の灌流遅延,脈絡膜肉芽腫によるダークパッチ,またはダークスポット,脈絡膜血管の過蛍光などの所見がみられる9)

    スペクトラルドメイン光干渉断層計(spectral-domain ocular coherence tomography:SD-OCT):漿液性網膜剥離,およびその内部の網膜色素上皮上に膜状組織がみられ,網膜外層が伸長して膜様組織と結合したものが隔壁を形成する(図2a)。また,深部強調モードでの撮像により,脈絡膜の肥厚が眼病期に観察され,回復期に改善する(図2b)。再発によっても肥厚するため,脈絡膜厚を測定することにより,サブクリニカルな炎症もとらえることができる。

    17_33_フォークト─小柳─原田病

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