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肩石灰沈着性腱炎

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-24
畑 幸彦 (北アルプス医療センターあづみ病院院長)
石垣範雄 (北アルプス医療センターあづみ病院肩関節治療センター長)
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  • ■疾患メモ

    40~50歳代の女性に好発し,腱板に石灰が沈着して炎症を引き起こす,日常よく遭遇する疾患である。石灰沈着部は半数以上が棘上筋腱である。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    急性疼痛と慢性疼痛があり,急性疼痛は腱板に沈着したアパタイト結晶が白血球に貪食され引き起こされる急性炎症。慢性疼痛は結晶による機械的刺激で引き起こされる滑液包炎と考えられている。

    〈急性期〉

    夜間に激しい疼痛で発症することが多く,関節もほとんど動かせないような疼痛を認め,主に安静時にも続く自発痛であり,症状は2~4週で軽減する。

    〈亜急性期,慢性期〉

    疼痛は急性期よりは軽いが,亜急性期では1~6カ月,慢性期では6カ月以上疼痛が継続する。

    疼痛は安静時には認めず,主に運動時痛である。

    【検査所見】

    〈急性期〉

    激しい疼痛のため自動運動はほとんど不可能な場合もあり,他動でも関節可動域は制限される。圧痛点は石灰沈着部に限局し,激しい痛みを訴える。

    単純X線像(図1)やCT像で石灰化巣をよく描出できる。特に3D-CT像(図2)を用いると石灰化巣の位置や肩峰との位置関係をよく描出することができる。

    15_15_肩石灰沈着性腱炎

    15_15_肩石灰沈着性腱炎

    〈亜急性期,慢性期〉

    無症状のことも多く,X線検査で初めて発見されることもある。有症状例では,石灰沈着部に限局した圧痛を認め,関節拘縮を合併している場合には関節可動域制限も認める。

    石灰沈着物が大きい症例では,肩峰下面でのインピンジメント現象を起こし,インピンジメントサイン陽性になる。

    【鑑別診断】

    〈急性期〉

    急性期の強い炎症所見がみられる場合は,化膿性関節炎,化膿性肩峰下滑液包炎も念頭に置く必要がある。特に肩への注射などが既に行われている場合は感染を鑑別すべきである。

    〈亜急性期,慢性期〉

    関節拘縮や腱板断裂の合併,他の疾患の潜在などを問診,視診,理学所見から鑑別する必要がある。偽痛風は,ピロリン酸カルシウム(calcium pyrophosphate dehydrate:CPPD)結晶が腱や滑膜などの軟部組織に沈着する疾患で,石灰性腱炎と同様に単純X線像にて石灰化陰影を認める。

    診断には穿刺した関節液中より,偏光顕微鏡にて正の屈折性を有する棒状のCPPD結晶を同定する必要がある。

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