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後天性色素細胞母斑(ほくろ)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
安齋眞一 (日本医科大学武蔵小杉病院皮膚科部長・教授)
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  • ■疾患メモ

    色素細胞に分化した腫瘍(母斑)細胞で構成される良性新生物。

    表皮内に母斑細胞が胞巣を形成せず,ほぼすべての母斑細胞の細胞質内にメラニン顆粒のある青色母斑(blue nevus)と,表皮内に胞巣を形成することがあり,細胞質内にメラニン顆粒を持たない母斑細胞の混在する非青色母斑(non-blue nevus)に大別される。その臨床病理学的分類をに示す。

    14_63_後天性色素細胞母斑(ほくろ)

    ■代表的症状・検査所見

    【青色母斑:blue nevus】

    〈症状〉

    通常型:臨床的には,単発のことが多く,やや硬く触れる10mm以下の半球状の青色から青黒色の結節である。顔面・手背・足背・背部に好発する。

    細胞型:臨床的には,腰臀部,頭部,手背・足背に大型の青い局面や腫瘤としてみられることが多い。

    〈検査所見〉

    通常型:ダーモスコピーでは,無構造・均一な青から青黒色上にwhitish veilがかぶる。病理組織学的には,隆起性の病変で,真皮内で双極紡錘型の核を持ち,細胞質内にメラニン顆粒を伴う母斑細胞が結節状に増加して,膠原線維の増生を伴う。

    細胞型:ダーモスコピー所見は,通常型と類似する。病理組織学的には,病変は真皮下層から皮下脂肪組織まで深く達することが多い。通常型でみられるような双極紡錘型の核を持つ母斑細胞と,類上皮型の,細胞質が豊富でメラニン顆粒がないか,あっても少ない細胞の二相性の増加がある。

    【非青色母斑:non-blue nevus1)

    〈症状〉

    Miescher型:臨床的には,顔面,頭部および頸部に発生する,境界明瞭でドーム状に隆起する黒褐色結節である。

    Unna型:臨床的には頭部,頸部,躯幹,四肢近位部に生じる柔らかな隆起性結節で,時に有茎性となり,表面には凹凸があり,いわゆる桑の実状を呈する。

    Clark型:臨床像は,手掌や足底を含む全身のいかなる部位にも出現する扁平な黒褐色斑で,複合型になると,中央が濃く,周辺が薄い色素斑となり,若干隆起する。

    Spitz型:臨床像は,若年者に好発する稀な病変で,60歳以上の高齢者ではきわめて稀である。全身のいかなる部位にも出現し,紅色あるいは黒褐色結節を形成する。

    〈検査所見〉

    Miescher型:ダーモスコピー像は,黒褐色から淡褐色のびまん性色素沈着を呈する。毛孔一致性の小口状色素脱出を伴い,偽色素ネットワークを示すことが多い。Cobble-stone patternを示すこともある。色素が薄い場合,コンマ状の血管拡張が見えることもある。病理組織学的には,母斑細胞が,真皮内で逆三角形に分布する。複合型と真皮型がある。

    Unna型:ダーモスコピー像は,皮膚色から褐色のびまん性パターンを示すことが多い。時にglobuleやコンマ状血管を伴う。病巣表面に隆起と陥凹を伴うことが多い。病理組織学的には,母斑細胞はほとんど皮表より隆起した部分にあり,病変中央の毛包やエクリン汗管に沿って,真皮深部にまで達することがある。そのため,病変の全体構築は茸状を呈する。表皮は時に脂漏性角化症様の変化を伴う。複合型と真皮型がある。

    Clark型:ダーモスコピー像は,非生毛部では,皮溝平行パターン,線維状パターン,格子状パターン,皮丘網状パターンがみられる。生毛部では,網状パターンや小球状パターンがみられる。病理組織学的には,境界部型と複合型がある。境界部型では,表皮下層に母斑細胞がほぼ限局して胞巣を形成する。複合型では,真皮内に胞巣を伴い,表皮内病変が真皮内病変より広範囲に分布する,いわゆるshoulder lesionを形成する。

    Spitz型:ダーモスコピー像として代表的パターンは,小球状パターンとスターバーストパターン,そして均一パターンである。病理組織的には,特徴的な大型の核を持つ,類上皮型あるいは紡錘形の母斑細胞が特徴であり,しばしば悪性黒色腫との鑑別が問題になる。境界部型,複合型,真皮型のいずれの病変も存在する。

    【特殊部位の色素細胞母斑】

    〈症状〉

    手掌・足底,milk line,外陰部,頭頸部(特に耳),結膜に生じる色素細胞母斑は,それ以外の部位に生じたものと比較して,以下のような特徴を持つとされる。

    ①病変が非対称であり,辺縁が不明瞭。

    ②メラノサイトの個別性増加が多く,表皮内胞巣の多形性がある。

    ③pagetoid進展がみられることがあり,毛包上皮内病変の形成が多い。

    ④maturationが欠如して,細胞異型が強いことがある。

    ⑤真皮乳頭層の膠原線維の増生や真皮のリンパ球浸潤が多い。

    〈検査所見〉

    病理組織学的に悪性黒色腫との鑑別が問題となりやすいので,注意が必要である。

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