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痤瘡(にきび)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-07
林 伸和 (虎の門病院皮膚科部長)
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  • ■疾患メモ

    挫瘡は,90%以上の人が経験する1)毛包脂腺系の慢性炎症性疾患2)で,面皰の形成に始まり,炎症を生じ,不可逆性の瘢痕を残しうる。思春期の男女あるいは思春期後の女性に好発し,顔面を主体とする症状であるため,QOLへの影響が大きい。受診患者の90%に瘢痕を認めることから,早期受診を促す患者啓発と,積極的な治療が望ましい。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    挫瘡は,脂腺性毛包に生じる以下の面皰,紅色丘疹,膿疱などが混在していることが特徴である。

    面皰(非炎症性皮疹):男性ホルモンの作用で生じる皮脂の分泌亢進と,毛包漏斗部の角化異常による毛孔の閉塞によって,皮脂が毛包内に貯留することで生じる。毛孔の閉塞している閉鎖面皰と開口している開放面皰がある。

    微小面皰(micro-comedo):面皰の前段階で,面皰の周りの組織にみられる病理学的な変化のみの状態をさす。

    紅色丘疹・膿疱・嚢腫・硬結(炎症性皮疹):面皰内でPropionibacterium acnesが増菌して炎症を起こして,丘疹や膿疱を生じる。さらに炎症が拡大した嚢腫や硬結を合わせて炎症性皮疹と呼ぶ。

    炎症後紅斑・炎症後色素沈着:紅色丘疹や膿疱が軽快した後に残る紅斑や色素沈着で,個々の紅斑や色素沈着は自然に軽快するが,炎症性皮疹の新生があると軽快が実感できないため,患者の訴えが多い。

    萎縮性瘢痕・肥厚性瘢痕・ケロイド:炎症性皮疹軽快後に生じることのある陥凹や隆起で,不可逆性の症状であるため,これらの症状を回避するため早期の積極的な治療が重要である。

    【検査所見】

    挫瘡は,脂腺性毛包の分布する顔面,前胸部,上背部を主体とする毛包一致性の症状であり,面皰が必ず存在することから診断は容易である。

    面皰の内容物を用いて嫌気性培養を行うと通性嫌気性菌であるP. acnesが検出される。

    毛包虫が多数みられる毛包虫症や黄色ブドウ球菌による感染症である毛包炎,マラセチア感染によるマラセチア毛包炎は,いずれも面皰を伴わず,別の疾患である。

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