□職場環境での特定の抗原曝露により発症する職業性アレルギーは,気道,皮膚,鼻など多彩な部位に出現し,時にはショックなど全身症状も引き起こす。
□疾患が重篤化・難治化しやすいばかりでなく,場合によっては離職や希望の職につけないなど,患者にとって経済的,社会的,精神的に大変深刻な問題となる。
□早期発見し,適切な予防対策を講じることは,患者の社会生活にとってきわめて重要である。
□2013年に『職業性アレルギー疾患診療ガイドライン2013』が刊行された。このガイドラインは,職業性喘息,職業性アレルギー性鼻炎,職業性皮膚疾患,過敏性肺炎,職業性アナフィラキシー(ショック),法律面の6つの章からなっている1)。
□職業性皮膚疾患には接触皮膚炎,接触蕁麻疹,挫瘡,色素異常症,紫外線障害,慢性放射線皮膚炎,タール・ピッチ皮膚症,砒素皮膚症,熱傷,凍瘡,皮膚癌,皮膚循環障害,感染症などがあり,本項ではこのうち頻度の高い接触皮膚炎と接触蕁麻疹について解説する。
□接触皮膚炎は,刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎に分類される。
□露出部や前腕,手など作業時に化学物質の付着しやすい部位に生じやすい。
□医療従事者におけるアレルギー性接触皮膚炎には,手袋に含まれている加硫促進剤が原因であることが多い。
□頻度の高いアレルゲンを表1に,職業別の原因を表2に示す1)。
□物質が接触した部位に急激にそう痒と膨疹を生じる。
□慢性的に続くと湿疹病変を呈し,接触皮膚炎との鑑別が困難になることもある。
□アレルギー性と非アレルギー性がある。
□接触部位の潮紅,膨疹にとどまらず,しばしば汎発性の膨疹や血管性浮腫,鼻炎や喘息症状,アナフィラキシーショックなどの全身症状を誘発する(接触蕁麻疹症候群)。
□頻度が高いものにラテックスがあり,そのほかに食物,植物,動物,小麦,穀類が原因となる。
□抗菌薬(セフォチアム,ピペラシリン,セフォペラゾン,ストレプトマイシン)による看護師のアナフィラキシーショックの報告がある。
□赤色の着色料として使用されるコチニール色素を含む飲料・菓子の摂取,化粧品の使用によって即時型アレルギーを生じたという報告が増えている。
□天然ゴムラテックスに含まれる蛋白質抗原に起因する即時型アレルギーで,天然ゴムを含む製品に接触する機会の多い人に生じやすい。
□医療従事者,二分脊椎や泌尿生殖器奇形を有し,頻回の手術歴を有する者,気管支喘息・アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患を有する者,ゴム製造業者などがラテックスアレルギーのハイリスクグループに属する。
□患者の3~5割はクリ,バナナ,アボカド,キウイといった食品を摂取した際に即時型アレルギーを生じることがあり,このケースをラテックス・フルーツ症候群と呼ぶ。
□ラテックス・フルーツ症候群は,果物や野菜に含まれる抗原とラテックス抗原との交差反応性に起因している。
□対策は,感作を予防するためにはハイリスクの医療従事者などは,溶出する蛋白質量の少ないパウダーフリーラテックス手袋を,ラテックスアレルギーの患者には天然ゴムを含まないニトリル製手袋やクロロプレン製手袋,ビニール手袋を選択することが勧められる。
□食品保存料や香料,消毒剤などが原因となる。
□食品加工業,美容師・理容師,医療従事者に多い。
□物質の刺激性の有無の判断やアレルギー性接触皮膚炎の原因検索に有用である。
□2015年5月に佐藤製薬より発売されたパッチテストパネル®には,ゴムや防腐剤,金属が含まれており,スクリーニングに優れている。
□原因と考えられる化学物質を扱う場合は,化学物質安全データーシート(MSDS)を取り寄せ,安全性の面からパッチテストをしてもよいかを確認する。
□アレルギー性および非アレルギー性の接触蕁麻疹に有用である。
□アレルギー性接触蕁麻疹に有用である。
□化学物質を用いた検査の場合は希釈系列をつくって検査を施行する。
□アレルギー性接触蕁麻疹に有用である。
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