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腸閉塞(イレウス)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-13
梶原由規 (防衛医科大学校外科)
長谷和生 (防衛医科大学校病院病院長)
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  • ■疾患メモ

    腸閉塞〔intestinal obstruction(イレウスileus)〕は腸管内容の通過障害をきたした状態であり,原因に応じて腸管の閉塞機転を伴う機械的イレウスと,閉塞を伴わない機能的イレウス(麻痺性イレウス,痙攣性イレウス等)に分類される。

    機械的イレウスは,さらに血流障害を伴わない単純性と,血流障害を伴う複雑性(広義の絞扼性)に分類され,それぞれ治療方針が異なる()。

    05_51_腸閉塞

    頻度は,単純性イレウスのうち癒着性が約60%,腫瘍性が約15%,絞扼性イレウスが約10%,麻痺性イレウスが約5%とされている1)

    近年欧米では,機能的イレウスのみをイレウス(ileus)と呼称し,機械的イレウスは腸閉塞(intestinal obstruction)として,イレウスとは明確に区別している。ここでは,わが国の慣習に従って,腸閉塞とイレウスを同義語として用いる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    単純性イレウス:周期的な疝痛(内臓痛)が徐々に出現し,しだいに腹部膨満,嘔気・嘔吐,排便・排ガスの停止を認める。腹痛は嘔吐によって一時的に軽快することが多い。通常,腹膜刺激症状は認めない。聴診にて腸雑音の亢進(metallic sound)を認める。

    絞扼性イレウス(strangulation ileus):発症初期は単純性と同様だが,腸管の壊死が進むと持続的な強く鋭い痛み(体性痛)を自覚し,反跳痛や筋性防御等の腹膜刺激症状および腸雑音の減弱・停止を認める。

    麻痺性イレウス(paralytic ileus):腹痛は軽度で,腹部膨満感や腹部不快感,排便・排ガスの減弱が主体である。腸雑音は一般的に減弱する。

    【検査所見】

    〈単純性イレウス〉

    血液検査:腸液喪失による脱水(赤血球数,ヘモグロビン,白血球数,BUN,クレアチニン等の上昇)および電解質異常(Na,K,Clの低下)を認める。

    腹部単純X線:腸管ガスを伴って拡張する腸管が認められ,立位で鏡面像(niveau)を形成する。拡張腸管のガスの形状によってKerckring襞(襞の間隔が狭い)かhaustra(間隔が広い)を判断することで閉塞部位の推測が可能である。

    腹部超音波:小腸閉塞では拡張腸管内にKerckring襞を確認できる(key-board sign)。拡張腸管内を内容物が往復する所見(to-and-fro movement)を認める。

    腹部CT:閉塞部位で腸管径の急激な変化(caliber change)を認める。癒着または腫瘍などの原因に応じた所見を認める。

    〈絞扼性イレウス〉

    血液検査:初期から高度の白血球数増加を認めることが多いが,腹膜炎が進行すると減少する。腸管壊死の進行に伴い,LDH,CPKなどの上昇や代謝性アシドーシスを認める。

    腹部単純X線:単純性と同様であるが,イレウス症状に比較して腸管内ガス像に乏しいことがある。

    腹部超音波:絞扼部位では腸管蠕動およびto-and-fro movementの消失,腸管壁および腸間膜の肥厚,腸内容物の高エコー化を認め,腹水貯留を確認できることも多い。壊死をきたした腸管では,腸管壁が菲薄化し,key-board signが不明瞭となる。

    腹部CT:超音波検査で診断が得られない場合,絞扼性イレウスの早期診断には腹部CT検査が最も有効である。血流評価のため可能な限り,単純CTに加えて造影CTを施行する。2箇所以上での閉塞により,その間の腸管拡張(closed-loop obstruction)を認める。腸管壁の造影効果不良および肥厚(壊死腸管では菲薄化),腸間膜の肥厚および血流消失,腹水等の存在により,絞扼性を疑う。

    〈麻痺性イレウス〉

    腹部単純X線:小腸のみでなく,大腸にもある程度ガス像が認められることが多い。

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    コチラより

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