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パーキンソン病

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-26
王子 悠 (順天堂大学医学部脳神経内科)
石垣泰則 (城西神経内科クリニック理事長)
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  • ■疾患メモ

    在宅で遭遇するパーキンソン病(Parkinson's disease)患者は進行例が多く,転倒や誤嚥性肺炎,認知症などリスクが高くなる。運動症状の治療も難渋する場合が多い。多様な非運動症状に対して適切な対症療法が必要となる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    発症早期のパーキンソン病患者の治療は比較的容易であるため,通院で問題なく加療ができる。既に診断がついているパーキンソン病患者を在宅で診察する場合は,進行期の患者であることがほとんどであると考える。在宅で新たにパーキンソン症状が出現した場合にはパーキンソニズムの鑑別診断を行う必要がある。

    【検査所見】

    パーキンソン病において,脳の形態を調べる一般的頭部CTとMRI検査は画像上異常を認めない。

    MIBG心筋シンチグラフィー検査とドパミントランスポーターシンチグラフィー(DATスキャン)で異常を認める。前者はパーキンソン病とレビー小体型認知症に異常を認め,後者はパーキンソン病だけでなく進行性核上性麻痺,多系統委縮症といったパーキンソン症候群でも異常を認める。前者は発症早期に異常が出ないことがあるが,後者は比較的早期から異常が現れる。

    ■治療の考え方

    進行期のパーキンソン病は発症早期に比べて治療が非常に困難であり,専門医でも治療に難渋する場合がある。進行期には,早期より薬剤の効果が次第に減弱するウェアリング・オフやジスキネジアにより十分な治療効果が得にくくなってくる。

    長期経過例では認知症を合併しさらに治療が難しくなるが,薬剤への反応性は残るため服薬管理を併せて行うことが重要である。可能であれば専門医の定期的な診察やアドバイスを受けることが望ましい。

    多様な非運動症状を呈するため,それぞれの症状に対して適切な対症療法を行う。

    リハビリテーションについては,筋力維持,廃用の予防に加えて嚥下訓練や発声訓練など,パーキンソン病診療における重要性は非常に高い。生活機能に目を向け,自己実現を目標とすることで介護者も含めたQOLの向上をめざす。

    屋内歩行が保たれている患者は,可能な限り運動レベルを損なわないように適切な薬物治療とリハビリテーションを行う。転倒対策も必要である。

    自力移動が著しく困難な症例では褥瘡や廃用の予防に努め,社会参加の機会を提供し,尊厳と生きがいを持って療養できるよう促す。誤嚥の予防や嚥下訓練も重要であるが,誤嚥性肺炎を繰り返すなど治療抵抗性の場合は経管栄養も考慮される。多様な非運動症状についても注意が必要である。

    ■アセスメントのポイント

    【運動症状の評価】

    日常生活に関する動作について問診と評価を行う。歩行,食事,更衣,整容,入浴,トイレ動作などを確認する。在宅では転倒しやすい場所を把握することも重要である。

    症状の変動がある場合は症状ダイアリー(日記)を使用して,1日の中でどの時間帯で調子が悪いかを判断する。

    【パーキンソン症状が悪くなった場合】

    まず服薬状況の確認を行い,内服が確実になされているかを本人および介護者に確認する。内服が規則的にできておりunder treatmentと思われる場合は,レボドパ増量など薬剤調整により症状改善を図る。

    重要な点として,パーキンソン病は基本的に緩徐進行性の病態であるため,急激にパーキンソン症状が増悪した場合は,感染症の合併やその他の内科的,整形外科的疾患を新たに起こしていないかを念頭に置く必要がある。

    【非運動症状の評価】

    便秘は必発であり最も問題となりやすい非運動症状である。放置するとイレウスになるため排便間隔の細かなチェックが重要である。

    起立性低血圧・食後低血圧についても注意する。

    パーキンソン病における排尿障害は過活動性膀胱が多い。流涎や発汗障害に困る場合もある。

    幻覚や認知機能障害の増悪は,薬剤の副作用や全身状態の急激な増悪が背景に隠れている場合もある。

    多様な非運動症状があるため評価が難しいことも多いが,訴えに応じて評価と治療を検討する姿勢が重要である。

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