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動物咬傷(ヘビ)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-12
池田弘人 (帝京大学医学部附属病院救急科救命救急センター准教授)
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  • ■治療の考え方

    わが国に生息する毒蛇として,マムシ,ヤマカガシ,ハブ,サキシマハブ,ウミヘビ,が挙げられるが,近年はペットの外国産毒蛇に咬まれるケースもある。

    咬まれた痕をよく観察して毒蛇を同定し,抗毒素投与を考慮,手配する。入手できない場合あるいはアナフィラキシーショックの既往がある場合は解毒剤セファランチンを投与する。

    咬傷部位は洗浄,保護する。

    ■病歴聴取のポイント

    咬傷,出血(皮下出血),腫脹,疼痛,水疱形成,横紋筋融解,急性腎障害,嘔気,嘔吐,腹痛,下痢,血圧低下,呼吸不全,心不全などがみられる。以下,ヘビの種類による特徴を挙げる。

    マムシ:一般には受傷後20~30分以内に局所の腫脹と疼痛が出現し,腫れの進行に伴って出血傾向や急性腎不全を起こす。しかし,稀に腫れがわずかで,咬傷後数時間で全身性の出血が現れる症例がある。このような症例では急激に血小板が減少し,皮下出血だけでなく激しい消化管出血を起こし危険な状態に陥る。

    ヤマカガシ:毒の主な作用は血液凝固作用(プロトロンビンの活性化)であり,その作用は強く,時に血中フィブリノーゲンが0mg/dLまで減少する。腫れや痛みはほとんどなく,数時間後から1日ほど経過した後に出血傾向が現れる。毒の直接作用により播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こし,さらに血栓形成により腎糸球体が閉塞し,急性腎不全を起こす。

    ハブ:局所の腫脹と疼痛が出現し,その後,嘔吐,腹痛,下痢,頻脈,チアノーゼ,血圧低下,意識障害などの全身症状に及ぶ。

    ウミヘビ:牙痕は目立たず,痛み,腫脹もないなど局所所見は乏しい。ほとんどの場合,2時間以内に複視,眼瞼下垂,唾液分泌過多,嚥下困難などの軽い神経症状から発症し,全身の筋肉痛,四肢弛緩性運動麻痺,呼吸筋麻痺による呼吸困難,意識障害に至る。筋肉毒による赤褐色尿,乏尿がみられる。

    ■バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    咬傷部位が上肢の場合,当然のことながら血圧測定や静脈路確保は非咬傷側で実施する。バイタルサインが急激に悪化するケースでは,早急にモニター装着,輸液,酸素投与を行い,救命救急センターに搬送し集中治療を開始する必要がある。

    【身体診察】

    咬まれた局所の細かい観察が必要である。牙痕の性状や局所の腫脹,内出血などでヘビの同定,病勢の進行度がわかる。出血傾向の出現を早めに診断することにも注意する。

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