株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

谷口 恭

登録日:
2022-01-14
最終更新日:
2023-02-06
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  • 「5類格下げで“医療難民”が急増する」

    新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が2類相当から5類に格下げされれば、診療する医療機関が増えるために「受診先がない」などという事態にはならない、と世間では言われている。だが、僕は正反対の事態を想定している。

    2022年に僕が担当していた「識者の眼」の最終回1)で、患者の「属性」が原因で受入を断る医療機関が少なくないことを述べた。具体的には、外国人、HIV陽性者、精神疾患(特に薬物依存症)などだ。コロナが流行し始めたとき、こういう患者の入院先を探すのに苦労すると考えていたのだが、それは杞憂に終わった。保健所が見つけてくれるからだ。

    興味深いことに、日頃は「通訳を連れて来ないなら診られません」と言われるある大学病院に米国人がすんなりと入院できた。「HIV陽性者は経験がないので診られません」と(HIVの治療を依頼しているわけではないのに)過去に断られたある大病院にHIV陽性者が直ちに入院できた。僕にとっては「保健所さまさま」なのだ。

    では、5類に格下げされると何が起こるか……。火を見るより明らかだろう。そしてその理由は「保健所の“鶴の一声”がなくなるから」だけではない。

    コロナを診る病院が増え始めた理由のひとつ(それも大きな理由)は「補助金」であったのは間違いない。個室を使わねばならず、院内感染予防にはそれなりの費用がかかるのだから仕方がないのかもしれないが、「カネがなければ動けない(動かない)」のが現実だ。5類に格下げされればこの補助金がなくなるだろう。そのときコロナを診ていた病院はどのような判断をするだろう。

    先日、救急救命士と話をする機会があった。彼らもまた5類格下げで搬送先が見つからなくなることを懸念していた。そもそも日本は他国に比べて人口当たりの病床数がとびぬけて多いはずだ。その国で救急搬送先が見つからないとはどういうわけか。コロナが流行し始めた頃、欧州、米国、インドなど全世界でベッドが足りずに廊下や待合室で患者が寝かされている映像が流れた。院内感染予防はなおざりとなるが重症患者を帰すわけにはいかず苦肉の策をとったのだ。すべての病院に補助金が出たわけではないだろう。医療者の矜持がそうさせたのだ。

    2023年5月8日。この日を境にコロナで救急車を呼んでも搬送先がなく、かかりつけ医が必死で病院を探しても入院先が見つからないという事態となるかもしれない。重症化リスクを抱えたコロナ患者はどうなるのか。こういう患者たちを“医療難民”と呼ぶのではなかったか。

    【文献】

    1)谷口 恭:医事新報. 5151:60.
    https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=21002

    谷口 恭(太融寺町谷口医院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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