無料立ち読み フルカラーでやさしくわかる! テーピングの基本1章:総論 テーピングの基本
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1.テーピングとは?
テーピングは,数種類のテープ(非伸縮テープ,伸縮テープ,キネシオロジーテープなど)を,外傷・障害のメカニズム,受傷機転を考慮した上で身体に貼付(巻く)することを示す。テーピングの目的は,以下の3つに分類される。
応急処置(圧迫・固定・保護)
▶ 効果
捻挫や肉離れなどの一次的外傷性損傷により,受傷部位周辺の組織が炎症や内出血を起こすことで循環障害が起こる。それにより,腫脹が引き起こされ,二次的外傷性損傷が起きる。このような状況では,テーピングを用いて圧迫することで,内出血を抑制し二次的外傷性損傷を軽減することが期待できる。
また,テーピングによって固定をすることで,患部の安静および保護を図ることができる。応急処置としてのテーピングは,スポーツ現場におけるRICE処置(PRICE,POLICE,PEACE&LOVE)の中のひとつとして用いられる。
▶ 注意点
過度な圧迫による循環障害や神経障害には十分に注意する必要がある。特に,腫脹のある部位や腫脹が予想される部位を全体的に包むテーピングは,腫脹による循環障害や疼痛の増悪をまねく恐れがある。そのため,一部を開放しテーピングを実施する(例:足関節内がえし捻挫では,オープンバスケットウィーブを用いるなど)。また,テーピングを巻く方向に注意を払う。
再受傷予防(補強・制限・誘導),外傷・障害予防(制限・補強・誘導)
▶ 効果
─ 危険肢位の軽減
受傷歴のある部位に対して,テーピングを行うことでその部位の安定性を補強する。また,危険肢位を回避するために,関節可動域を制限する。フォームに問題がある場合には,動作の修正や正しい運動学習を促すために運動方向を誘導する。
─ 競技特異的傷害の予防
各競技種やポジションで起こりうる可能性の高い外傷・障害の予防を目的として,関節可動域の制限や補強を行う。
▶ 注意点
テーピングに依存しすぎないこと。受傷歴の部位の治療,リハビリテーション,アスレティックリハビリテーションをおろそかにせず,あくまでの1つの手段であるという認識が必要である。
競技復帰後の精神的サポート
競技復帰直後の選手の不安感低減に効果がある。医師の診断後,十分な治療やリハビリテーションを実施し,選手が競技復帰した際には,運動器の機能改善に加えて,精神的不安感が最小限であることが望ましいのは言うまでもない。しかしながら,実際には選手が関節運動に伴う不安感などを有している場合も少なくない。このような場合,適切なテーピングを用いることにより,可動域を不安感が生じない範囲に制限することで,選手が不安感なく競技復帰する助けとなる。
▶ 注意点
選手には,テーピングの目的と効果,注意点をしっかりと伝えることがアスレティックトレーナーの務めである。また,中高生アスリートにおいては,保護者への説明も忘れてはならない。
2.テーピングを実施する際の注意点
テーピングは適切に実施しなければ,効果を期待できないばかりか,状態を悪化させる恐れがあることを理解する必要がある。テーピングを実施する際は,下記の注意点を意識するとよい。
▶ テーピング実施前
テーピングを実施する前に,患部(実施部位)の状態を確認する。汚れがなく清潔であるか,汗や雨によって濡れていないか,体毛の状態はどうか,皮膚がかぶれやすくないかを確認する。これらの確認を怠ると,テープの粘着力の低下やテーピングによる皮膚トラブルなどを引き起こす恐れがある。
特に,応急処置を目的とする場合は,患部の出血や創傷の状態を観察し,テーピングを実施できる状態かを確認する。出血や創傷がある場合は,患部を清潔にし,患部を保護した上で,テーピングを実施する。
▶ テーピング実施時
患部の状態や目的に応じて,適切なテープを選択する。また,受傷機転や解剖学的構造を考慮した上で,テープのテンションや方向を調整する。テーピングを実施する際は,対象者であるアスリートが正しいポジションをとれるように,安定した場所で行う。テープを巻く者自身も,体勢に注意する。不自然な体勢では,テーピングを効果的・効率的に実施しづらいばかりか,不要な腰痛や肩こりを引き起こす可能性がある。
急性期で腫脹がある場合は,循環障害に注意しきつく巻きすぎないこと,腫れの逃げ場をつくるなどの工夫が必要である。また,上腕や下腿にテーピングを巻く際は,体表近くを走行する神経(橈骨神経や尺骨神経,腓骨神経など)を圧迫しすぎて,神経障害を引き起こさないように注意を払う。
▶ テーピング実施後
テーピング実施後は,過度な圧迫や固定による循環障害や神経障害を引き起こさないように,疼痛や違和感がないか,血流制限がないかを確認する。また,目的とする制限以外の動作が妨げられていないか,目的とした効果が引きだされているか,動作確認やテストを用いて確認する。
競技種目によっては,足や手など微妙な感覚が大切となるので,アスリートの声や表情から違和感や納得しているかを確認する。
3.テープの種類と特徴
テーピングの目的に応じて,テープの種類を選択する。また,貼付する回数,貼付位置,テープのテンション,テープの組み合わせを選択する。以下に,その特徴を列挙する。なお,各疾患に対するテーピングは,後述の項目を参照されたい。
アンダーラップ(図1)
皮膚の「保護」を目的として用いられる。テープを貼付する前に使用し,繰り返しテーピングすることによる皮膚トラブルやテーピングによるかぶれを防止する。また,体毛を除去できない場合にも用いられる。アンダーラップを厚くしすぎると,その後テープの固定力が低下するので,皮膚を保護しつつも厚くしすぎないことが重要である。

非伸縮テープ(ホワイトテープ)(図2,表1)
通称,ホワイトと呼ばれるテープである。テーピング部位の「圧迫」「固定」「制限」の手段として用いられる。

伸縮テープ
伸縮テープの特徴は,非伸縮テープと異なり,伸縮することで身体の動きにフィットし,動作を必要以上に妨げることがないことである。そのため,「固定」「制限」「サポート」として用いられる。逆に「固定」や「制限」は非伸縮テープよりも劣ると言える。固定や制限をしつつも,可動性も必要な場合に重宝するテープである(表2)。

▶ ハード伸縮テープ(例:エラスチコンなど)(図3)
手で切れないためシザーカット(はさみで切る)をして用いる。膝関節や大腿部,肩関節など,比較的面積の広く可動域が大きい部分に使用することが多い。非伸縮テープと併用して固定力を高める使い方もある。

▶ ハンディカット伸縮テープ (例:ソフトエラス)(図4)
伸縮性が高く,手で切ることができる。固定力や圧迫力は低いため,テーピングの仕上げとして全体を保護するように,「サポート」として用いる。また,アンカーとして使用する。

▶ 自着性テープ(例:パワーフレックス)(図5)
非粘着性だが,自着性で皮膚への負担が少なくかぶれにくく,巻き直しが可能である。アンダーラップの代わりや仕上げのラッピングに用いることができる。また,適度な圧迫力があり,バンテージの代用としても用いられる。

キネシオロジーテープ(図6,表3)
キネシオロジーテーピングは,カイロプラクターの加瀬健造氏が発案したテーピング法である。キネシオロジーテープは,皮膚にしっかりと貼りつく伸縮性のテープであり,筋肉や筋膜の動きのサポートや循環改善を目的として使用する。
筋肉の走行に沿って,貼付部位の皮膚のゆるみがないように伸張させた状態で貼付し,貼付したテープをよく擦り,皮膚との密着を高める。テープを引っ張るのではなく,対象部位の筋肉と皮膚を伸張させて貼付することがポイントである。
通常,テープの色は,肌色(薄橙)であるが,近年はピンク色や青色,黒色などもあり,選手のメンタル面への影響を考慮して使い分けることもある。

テープの扱い方のポイント
▶ テープの貼り方
テープは,「しわ」「よれ」「ずれ」などのひずみがないように貼付する。不均等な力で引っ張ると,テープにひずみが生じる。このひずみは,違和感や痛みの原因になる。
テープを貼付する方向は,基本的に遠位から近位に向かって貼付する。ただし,キネシオロジーテープで筋のサポートを目的とする場合は,部位や症状によって近位から遠位に向かって貼付する場合もある。また,何度も貼り直しをすると,テープの粘着力が低下するだけではなく,皮膚を傷めるため,原則として貼り直しは行わない。やむを得ず貼り直しをする場合は2回以内にとどめる。
▶ テープのはがし方(図7)
テープをはがす際は,体毛の流れに沿ってはがす。また,一気に上に引っ張ってはがすのではなく,皮膚を押さえながら丁寧にはがす。

▶ その他
伸縮性テープやキネシオロジーテープは,テープの角を丸くカットすることで,はがれを防止することができる(図8)。

テーピング関連用品・保管方法(表4)
テープを保管する際は,高温多湿や直射日光の当たる空間を避ける。不適切な保管は,テープの劣化につながり,いざ使用する際にテープが固まりはがれなかったり,本来の機能が喪失している恐れがある。また,テープの変形を防ぐために,ロール軸を垂直にして平らな場所で保管する。




4.テーピングの基本的な巻き方
アンカー(図12)
▶ 役割
テーピングの土台,テープを巻く範囲を決める。
▶ ポイント
循環障害を引き起こさないように締めつけすぎないこと。

サポート(縦サポート,Xサポート,水平サポート,スプリット,スパイラルなど)(図13)
▶ 役割
関節の可動域制限,関節の安定,圧迫。
▶ ポイント
テープの本数を増やすことで固定力を調整することができる。その際は,少しずつずらして貼る。スパイラルは回旋の制動効果が高い。また,スプリットは,サポート・Xサポートよりも安定力は低いが,動きを制限しすぎずに安定させることが期待できる。

ラッピング
▶ 役割
テーピングの保護(ずれの防止,水や雨による粘着力の低下防止)や固定力の強化テーピングの最後に実施することが多い。
▶ ポイント
締めつけすぎないように注意する。
キネシオロジーテープ1〜3)
▶ I字(図14)
必要な長さにテープを切り,そのまま使用する。

▶ Y字(図15)
I字の一方の端を3~5cm残し,切り込みを入れたもの。

▶ X字(図16)
I字の中央を3~5cm残し,切り込みを入れたもの。

▶ 熊手状(浅膜状)(図17)
Y字をさらに細く切り込みを入れ,熊手状にしたもの。

▶ スリット(短冊状)(図18)

I字の両端を2cm程度残し,中心部から4本ないし8本になるように切り込みを入れたもの。肘や膝に用いることが多い。
文 献
1) 加瀬健造, 他:キネシオテーピング・アスレチックテーピング併用テクニック. スキージャーナル, 2002.
2) 吉田一也:キネシオテーピング®の理論と基本貼付法. 理学療法科学. 2012;27(2):239-45.
3) キネシオテーピング協会:キネシオテーピングトレーナー養成講座ワークブック.キネシオテーピング協会, 2018.
参考文献
▶ 山本郁榮, 他:スポーツ外傷・障害からみたテーピングの実技と理論. 第5版. 文光堂, 2010.
▶ アスレティックトレーナー専門科目テキスト第6巻 予防とコンディショニング. 石山修盟, 編. 日本スポーツ協会指導者育成専門委員会アスレティックトレーナー部会, 監. 文光堂, 2011.
宮本瑠美
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