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『診療所経営の教科書』小松大介氏インタビュー 「診療報酬に一喜一憂せず『大きな流れ』をつかんでほしい」

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  • 真っ当にやれば「在宅」は経営スタイルとして十分成り立つ

    ――先ほどの2点目の地域包括ケアと在宅に関して本の中で強調されていることは何でしょうか?

    小松 それはシンプルで、在宅の市場は間違いなくあります。点数が確かに下がり、従前のように在宅医療の品質に関係なく儲かった時代ではもうありませんが、真っ当なことをきちんとやれば、1つの経営スタイルとして成り立ち得るということです。

    ――在宅については今後どういうスタイルならいいというのはありますか。

    小松 それは特に戦略的に考えてほしいと思います。これが正解というのは実はなくて、ある程度ニーズがあるものをいかにうまくやるか、いかに良い仕組みにするかという勝負だと思っています。同じ在宅でも施設ばかり回るスタイルはいま非常に敬遠されがちで、施設側も困っていることが多いのですが、行けば10人、20人診られますし、しかも施設側にもいろいろインフラがあって、問診を書く場所しかり、ちょっとしたものを保管してもらう倉庫しかり、人的にも看護師さんが常駐している施設も多い。そういう意味で、それらを活かせるようにコーディネーション、アレンジをうまくやれるのなら、それはそれで1つのやり方だと思っています。

    もう1つの王道は、一般居宅といわれている普通のご自宅を1軒1軒回ること。7対1病院を含めた急性期病院が直で患者を在宅へ帰す時代になってきたので、しっかり評判を上げていけば、急性期病院から患者さんがすぐに下りてくる。だから一般居宅の場合は、戦略というよりは営業が大切で、連携のあり方を組み立てていくほうが明らかにうまくいきます。

    これとは違う次元で、外来をやるかやらないか、在宅専門の診療所になるかならないか、という問題もあります。外来がなければ当然在宅に集中できるし、低コストで済むというのも1つの考え方だし、外来をきちんとやり、通院困難な患者さんに対しては送迎を出して外来に迎えて地域包括診療料などをとっていくというのも1つのやり方です。 

    診療報酬に一喜一憂することなく「大きな流れ」をつかんでほしい

    ――『診療所経営の教科書』に対してはどのような反響が来ていますか。

    小松 「患者数の目標や初診率、診療圏などがわかったことで経営のポジションが見えてきた」とか、本の後半では生々しいものも含めて対応の事例を挙げているので「共感しました」といった声が比較的多いですね。「他の先生に本を紹介しておいたよ」「今度開業する先生にプレゼントしておいたよ」といった話も届いています。

    コンサルタントが頭で考えると本当はもっと深くて難しいことが書けるのですが、私としては、あまりマニアックな方向にはいかず、一番悩んでいる人にはまる内容に収めたつもりなんです。本当に開業して悩んでいる先生たちが、読んでもらったときのレスポンスの良さが自信になっているところはありますね。

    ――来年は診療報酬と介護報酬の同時改定もあります。診療所の先生方はこれをどうすれば乗り切っていけるのでしょうか。

    小松 今後、開業医の先生たちが診療報酬に一喜一憂することはなくなってくると思っています。むしろ先生たちに強く意識をしてほしいのは、日本およびご自分の開業している地域には大きな流れがあり、それは、この本に載っているデータを地域ごとにみればすぐにわかる。だから頭で考えてくださいということです。

    ご自分の地域でこれから起きる事態は明確です。人口が減れば患者も減るし、働き手を探すのも大変になるが、土地も余ってくるとか、データからいろいろなことが見えてきて、それで戦略も作れます。診療報酬改定にどうこうというよりも、大きな流れを読む読み方をつかんでもらえるといいのではないかと思っています。

    ――この本をもとに考えれば自ずと戦略は見えてくるはずだと。考えることを促すという意味ではまさに「教科書」ですね。本日はありがとうございました。


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