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高HDL-コレステロール血症:診療のポイント[学術論文]

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  • 6. わが国で行われた近年の疫学研究のまとめ

    Hirata,Okamuraらは19),わが国で行われた9個のコホート研究のデータをプールし,血清HDL-コレステロール値と死亡率の関係について検討した(n=4万3407)。観察期間の平均は12.1年である。表2 19)で示すように,血清HDL-コレステロール値と冠疾患死,虚血性脳卒中死にはU字型の関係が存在する。90mg/dL以上では高ハザード比を示した。


    著明な高HDL-コレステロール血症は,動脈硬化性疾患のリスクとなりうる。さらにHirata,Okamuraらは,飲酒者と非飲酒者に分けて検討すると,飲酒者において上述のU字型の関係が顕著になると言及している。

    7. 診療のポイント

    著明な高HDL-コレステロール血症は「善玉コレステロールが増えているからよい」ではなく,「過ぎたるは及ばざるがごとし」の場合があることを念頭に,慎重に臨床経過を観察,必要に応じて動脈硬化性疾患について精査する必要がある。高HDL-コレステロール血症の成因を知る上で,家族歴,病歴聴取,特に飲酒歴や服薬歴は重要である。

    8. 現状の問題点と今後の展望

    現在のHDL-コレステロール測定では,HDL粒子数が増加しているのか,またはHDL粒子中のコレステロールが増加しているのかは区別できない。HDL-コレステロールの測定に加えて,HDL粒子の組成,粒子サイズ(図5),機能の多様性1)の理解とそれらを評価する測定法・評価法の開発,臨床応用が必要である。近年,HDLのコレステロール引き抜き能や取り込み能を評価する方法が開発され,その有用性が研究レベルでは明らかになっており20)21),今後の発展が期待される。

    【文献】

    1) Pownall HJ, et al:Nat Rev Cardiol. 2021;18(10):712-23.

    2) Yamaguchi S, et al:J Lipid Res. 2014;55(5):905-18.

    3) Miller GJ, et al:Lancet. 1975;1(7897):16-9.

    4) Castelli WP, et al:JAMA. 1986;256(20):2835-8.

    5) Hirano K, et al:Low HDL/High HDL Syndromes. Encyclopedia of Endocrine diseases. Martini L, ed. Elsevier, 2004, p199-205.

    6) Vergeer M, et al:N Engl J Med. 2011;364(2):136-45.

    7) Hirano K, et al:Metabolism. 1992;41(12):1313-8.

    8) Arai H, et al:J Atheroscler Thromb. 2022;29(6):850-65.

    9) Matsuzawa Y, et al:Atherosclerosis. 1984;53(2):207-12.

    10) Koizumi J, et al:Atherosclerosis. 1985;58(1-3):175-86.

    11) Yamashita S, et al:Atherosclerosis. 1988;70(1-2):7-12.

    12) Inazu A, et al:N Engl J Med. 1990;323(18):1234-8.

    13) Hirano K, et al:Curr Opin Lipidol. 2000;11(6):589-96.

    14) Hirano K, et al:Arterioscler Thromb Vasc Biol. 1995;15(11):1849-56.

    15) Hirano K, et al:Arterioscler Thromb Vasc Biol. 1997;17(6):1053-9.

    16) Okada T, et al:J Clin Lipidol. 2019;13(2):317-25.

    17) Ishigami M, et al:J Biochem. 1994;116(2):257-62.

    18) Yamashita S, et al:Curr Opin Lipidol. 2016;27(5):459-72.

    19) Hirata A, et al:J Clin Lipidol. 2018;12(3):674-84.

    20) Rohatgi A, et al:N Engl J Med. 2014;371(25):2383-93.

    21) Fujimoto D, et al:Atherosclerosis. 2022;345:44-50.

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