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【医師×製薬企業コミュニケーションの「大変革」を読む ②】加速する情報提供・コミュニケーションのデジタル化─製薬企業の医療従事者サイトをどう活用するか(日本医事新報特別付録「製薬企業オウンドメディア最新ガイド2021」)

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  • 情報源の多様化

    図3も白書からの引用であるが、調査に協力した医師の情報取得源をクラスター分析した結果で、クラスターは3つのグループに分かれた。情報入手源の大半はMRという「MR派」、MRやインターネット、学会、専門誌、業界誌等リアルとデジタルを織り混ぜて平均的に情報を取得している「マルチメディア派」、もっぱらインターネットを回遊して自ら情報を収集する「インターネット派」の3つである。もっとも、近年は主要専門誌や海外学会もインターネット上にサイトを構築して文献や学会情報を出しているので、従来紙媒体経由や会場へ集合して得ていた情報がインターネット上だけで間に合う場合が多くなってきた。インターネットという情報源はそれだけで複合情報の集合体となり得るため、将来的にはマルチメディア派とインターネット派の垣根がなくなる可能性もある。

    情報理解とメディアの回遊

    図4は情報入手における1次情報入手源とその後の情報源遷移の状況を表している。それぞれのサークルは最初に情報を入手した情報源(1次情報入手源)を示している。矢印は一次情報入手後、自分にとってさらに必要と思った場合に、より理解を深めるために関連情報を求めて別の情報源へ遷移して2次情報を取得することを示している。

     

    この遷移図は、特定の薬剤の新規情報、特に新薬の情報は全体の30%前後の医師はMRから第一声を取得しているが、それ以外の医師は最初の情報をインターネット上の情報源から入手していることを示している。

    それぞれの情報源はコミュニケーション上の特性がある。コミュニケーションにおける言葉のやり取りはキャッチボールで例えられることがあるが、医師のニーズを受け取ってリアルタイムに必要な情報を投げ返す(提示する)やり取り…すなわち双方向性のスタイルを行うMRは最も優れた情報源であり、逆にインターネット上の医療ポータルサイトでのサービスや製薬企業のウェブサイトは片方向性のため、医師にとって自分のニーズに合った情報を自分で探す手間が発生する。

    気になる情報をキャッチした時、今まではMRとの面談の中でMRが医師のニーズに合った情報を選択し継続提供することにより医師は知見の蓄積をしていったが、インターネットの登場によるデジタル化の発展とそれに伴うMRの訪問減少により、情報収集のための情報源自体は多様化し、自分で情報源を周回しながら必要な情報を集めるようになってきたのが近年の傾向である。

    デジタルとリアル

    このコミュニケーション手法の変化自体は医療用医薬品だけではなく、むしろ社会生活においては既に様々な場面で一般化しつつある。特に一般消費財ではアマゾンや楽天など商取引自体がすべてデジタル上で完結し配送のみ人手に依っているケースもある。そして医師をはじめとする医療従事者も生活者という立場から見れば、このデジタル化された消費社会の中に浸かって生活をしているので、決して違和感のある様式とは言えない。

    オンライン診療やオンライン服薬指導などが現実化してきている現在、医療環境自体がアフターデジタルと呼ばれる環境に変わっていくことは想像に難くない。しかしながら、疾患は生身の患者そのものに起きているリアルの反応であり、医療自体はそのリアルに対応するものであるから、デジタルとリアルの間のバランスを取りながら進めることが必要である。そのような状況の中では医薬品や医療の情報源として製薬企業のウェブサイトをどう利用していくかが鍵になるし、製薬会社側もそう考えてサイトからの情報提供に力を入れている面もある。

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