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【医師×製薬企業コミュニケーションの「大変革」を読む ②】加速する情報提供・コミュニケーションのデジタル化─製薬企業の医療従事者サイトをどう活用するか(日本医事新報特別付録「製薬企業オウンドメディア最新ガイド2021」)

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  • B:知りたい情報が探せない

    日常診療等における疑問などをインターネットで調べるときには、大抵googleなどで検索を行う。しかし、近年医師は図4のように医療ポータルと呼ばれるサイト(エムスリーや日経メディカルOnline、ケアネット、メドピア等)で最初に情報を探すケースが増えている。しかしながら、医療ポータルに掲載されている情報は製薬企業がスポンサーになって提供しているものも少なくはない。医療ポータルは限られたスペースのため、気になる情報についてはさらに詳細な2次情報を求めてMR等に聞くことになる。

    図5は2019年に調査された「1次情報入手先と入手後の2次情報入手源遷移先」を診療所勤務医や開業医の回答に限定して見た結果である。2018年頃より製薬業界全体でのMR削減や診療施設自体の訪問規制によるMR訪問減少の影響もあって医療ポータルから製薬企業のウェブサイトへの遷移傾向が強くなっている。これは2020年にはCOVID-19流行でより明確な傾向となって現れた。すなわち、知りたい情報は実は製薬企業のウェブサイトに大抵はあるが、どの製薬企業のウェブサイトの中にあるかがわからない点が複雑な手数をかけなければならない原因となっている。

    もう一つの大きなポイントは、製薬企業のサイトを訪れたが一体どこにあるのか、またどう操作すればいいかわからないといった問題である。さらにウェブサイトの構成自体が企業で異なっているため、項目の分類の仕方や項目名称が異なるなど企業ごとに扱いが違って煩わしいケースがある。もっと酷くなると、同じ企業内でも製品領域が違うだけで構成そのものが違う場合がある。独自性と言えば独自性だが、閲覧者を置き去りにした独自性は単なる独りよがりでしかない。

    そうした反省もあって、近年はユーザーフレンドリーなサイト構築を目指して人間工学を取り入れて理論的な導線設計をすることによりユーザーインターフェース(UI)の優れたサイトを構築する企業も現れてきた。さらには、医師や医療従事者がある情報を知りたいと考えたときに、医療ポータルや自社主催のインターネット講演会からの導線をも含めて、その製薬企業が様々なメディアで提供している情報を回遊することによって理解を深めてもらうように、コミュニケーション全体での導線設計を試みている企業も増えてきている。理解の深耕に期待できる点である。

    サイト内で情報を探す手段としてサイト内検索という手段がある。調査等をすると、探すよりも手っ取り早く検索をしたいという意見が多く上がるが、実は検索は思った結果を得ることが難しい。例えば「副作用」という用語一つとっても「SE」や「side effect」「エスイー」「サイドエフェクト」、さらにはアルファベットの全角や半角等の違いがある。これらの類義語がすべて同じ意味であるように検索システムを常に調整していかなければならない。さらに輪をかけて難しくしているのは、その精度が普段使い慣れているgoogleと同じレベルを無意識に求められてしまう点である。これらはそういったロスが少ないタグ検索やAIチャットボットにより解決されていく。

    C:製薬会社は自分の都合の良いことしか載せてないのでは

    製薬企業のイメージの1つとしてよく耳にする言葉である。かつてセールストークの一環として一部では自社にとって都合の良いことばかりを宣伝していたケースもあったと聞いている。しかしながら、現在では業界全体でコンプライアンス・コードを作成しチェック機能を持たせ、ネガティブなことも伝える努力を推進している。特にオウンドメディアである医療従事者サイトはかなり厳しい規制のもと厳正な運営を求められている上、例えば、副作用情報の詳細等について提供する会社も出現している。

    まだすべての会社で完全になくなったとは言い切れない部分もあるが、そういった会社は今後利用者である医療従事者によって淘汰されていく。

    医療従事者サイトの構成と位置づけ

    製薬企業のオウンドメディアである医療従事者サイトの内容は利用者サイドから分類すると大きく3つに分かれる。

    A)販売製品自体の固有の情報
    B)販売製品の効能・効果に関連する医療情報
    C)販売製品等に関連のない医療情報

    製品自体の情報は製品紹介と理解促進による当該製品の適正普及と適正使用の促進、製造物責任法における説明責任の補完の意図がある。また、販売製品等に関連のない医療情報は、医師は必要としながら今までは製薬企業から提供されることを期待していなかった情報である。今後は自社製品とは関係がなくても医師の活動をサポートするという形で医療への貢献ができるような情報が増えていく。

    前述のMRやインターネットでの各情報ソースに対して医師の情報回遊が一般的になってきた現在、オウンドメディアは情報提供のハブとしての機能を持つことも期待されている。臨床医の皆様がどこかのメディアの情報をキャッチし、その情報をもっと深掘りしたいと思われたとき、医療従事者サイトの一部はハブとしての情報提供機能を構築し始めていることから、一度製薬企業のサイトを訪問することをお勧めします。

    (日本医事新報特別付録「製薬企業オウンドメディア最新ガイド2021」の全文はこちらから無料でダウンロードできます)

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