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黄斑上膜,黄斑円孔[私の治療]

No.5029 (2020年09月12日発行) P.41

秋山英雄 (群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座眼科学教授)

登録日: 2020-09-13

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  • Ⅰ.黄斑上膜

    黄斑前膜と呼ばれることもある。女性に多く,2/3を占める。90%の症例で後部硝子体剥離があるが,ない症例にも発症しうる。後部硝子体皮質前ポケットの後壁に細胞成分が増殖して上膜の形成が起こる。後部硝子体剥離に伴って黄斑上膜が剥離する場合がある。黄斑上膜の肥厚,収縮に伴い視力低下や変視症が生じるが,軽症の場合には自覚症状がなく,偶然発見されることも多い。特発性に加えて,網膜剥離,ぶどう膜炎,糖尿病網膜症に併発することもある。

    ▶診断のポイント

    検眼鏡所見として,黄斑部にセロファンのような半透明の膜形成と網膜血管の蛇行がある。光干渉断層計(OCT)を用いた診察で容易に判断できる。上膜が肥厚して,進展すると網膜外顆粒層が三角形に挙上して中心窩の陥凹が消失する。進行した症例では上膜が高輝度に見え,時に中心窩の位置も同定が困難となる。ものが歪んで見える変視症は,アムスラーチャートで評価できる。

    ▶私の治療方針

    薬物治療はなく,手術療法に限られている。自覚症状がない場合は経過観察として,視力低下や変視症が出現して日常の生活や仕事に支障をきたす場合に手術を行うことが多い。

    ①現状より症状が悪化することを防ぐことが手術の目的である,②歪みが改善することは期待できるが,完全に元の状態にはならない,③歪みの改善には数カ月~半年かかる,④白内障が高度である場合には歪みがマスクされていて,水晶体再建術を併用した硝子体手術後に歪みを自覚してしまうことがある,という4つのインフォームドコンセントを行い,承諾を得た場合のみ観血的療法を試みる。

    ▶治療の実際

    55~60歳以上の症例では,硝子体手術のみならず水晶体再建術を合わせて行う。眼球に対する手術侵襲が小さく,術創の自己閉鎖が得られる25もしくは27G(ゲージ)極小切開硝子体手術を,広角観察システムの顕微鏡を使用して行う。後部硝子体が未剥離の症例では,トリアムシノロンで硝子体を可視化して,人工的に後部硝子体剥離を行う。黄斑上膜を硝子体鉗子で把持して網膜から剥離する。中心窩癒着が強い場合があり,黄斑円孔ができてしまうことに注意を要する。さらに,ブリリアントブルーG(BBG)液で染色して,内境界膜(ILM)剥離を行うことで,再発予防する。術創の自己閉鎖をしやすくするため,全量ではないが液空気置換を行っている。

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