お知らせ
がんゲノム医療の課題と展望（西田俊朗 国立がん研究センター中央病院病院長）【この人に聞きたい】
承認薬を増やすことが最大の課題
国と製薬企業、医師、患者が協力して創っていく
がんゲノム医療は人類の財産になる
にしだ としろう：1956年兵庫県生まれ。81年阪大卒。87年米タフツ大研究員。阪大院医学系研究科助教授、大阪警察病院副院長などを経て、2013年国立がん研究センター東病院病院長。16年同センター中央病院病院長。厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」座長
中核病院や連携病院が整備され、がんゲノム医療は4月から臨床現場で本格的なスタートを切った。西田俊朗氏（国立がん研究センター中央病院病院長）に課題や展望を聞いた。
パネル検査を標準治療に
─がんゲノム医療の構想とは。
患者さんが命懸けで臨む抗がん剤治療で重要となる治療効果の予測を、プレシジョン・メディシン（精密医療）として正確にできるようにするというものです。
ただ、がんゲノム医療の定義によって視野は大きく違ってきます。数百の遺伝子を一括検出する遺伝子パネル検査までをがんゲノム医療とすると、臓器に関係なく、ある遺伝子変異に特異的な薬を処方するという考え方で、限定的といえます。一方で、全ゲノム解析までと定義すれば、そうした治療の最適化にとどまらず、遺伝子変異の量によって免疫治療の効果が違うといったことや遺伝子の発現の制御まで見据えた治療を考えるようになるでしょう。
厚生労働省はパネル検査について来年4月の保険承認を目指していますから、近未来的な標準治療はパネル検査までになりそうです。
当院で実施しているパネル検査では、約6割の患者さんに治療候補薬剤が想定できる変異が見つかります。ただ、変異があることとそれに対して実際に臨床で有効な治療薬があることは違いますし、薬の有効性もまた違う。適応外使用や未承認薬による治験を含め、治療を受けられる患者さんは現在、がん腫にもよりますが10％から多く見積もって20％程度にとどまります。これから数年間の最大の課題は、承認治療薬を増やすことです。
