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リンパ管静脈吻合のコツ【リンパ管と静脈を十分に剝離し,緊張がない状態で吻合することが吻合部開存率を高める】

No.4900 (2018年03月24日発行) P.55

亀井 譲 (名古屋大学大学院医学系研究科形成外科学教授)

前川二郎 (横浜市立大学医学部形成外科教授)

登録日: 2018-03-21

最終更新日: 2018-03-19

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  • リンパ管静脈吻合において,吻合予定のリンパ管と静脈を探し出すことは,本手術の重要なポイントであり,誰もが悩む点だと思います。そこで多くの経験をお持ちの横浜市立大学・前川二郎先生に,吻合予定のリンパ管と静脈を同定するコツ,吻合時の注意点,さらに最近のトピックスをご教示頂きたいと存じます。

    【質問者】

    亀井 譲 名古屋大学大学院医学系研究科形成外科学教授


    【回答】

    (1)リンパ管と静脈の同定

    皮膚が白く皮下組織が薄い症例では,術直前のICG蛍光リンパ管造影で静脈が黒く,リンパ管が蛍光を発し白く描出されるので,同定は難しくありません。進行例では皮下組織が厚く,また皮膚も厚いため,ICG蛍光リンパ管造影では静脈やリンパ管を同定できません。

    現在,私が用いている方法で最も有用な同定法はSPECT-CTリンパシンチグラフィです。単純CT画像とリンパシンチ画像のフュージョン画像が得られ,前者から皮下組織の静脈を同定でき,またフュージョン画像からトレーサーの集積部位(リンパ管)を解剖学的に特定できるので,双方が近くに存在する部位を皮膚切開部位としています。自験例では90%以上の確率でリンパ管の同定が可能です。

    他の方法としては,MRリンパグラフィーを用いるのもよいかもしれませんが,良好な画像を得る撮像のタイミングが症例で異なり,経験が必要だと思います。また,超音波検査も双方の同定に有用だと思います。高スペックな器械と経験がないとリンパ管の同定が難しいのですが,血流がなく圧迫しても潰れない管腔構造であればリンパ管の可能性が高いと考えられます。

    術中では,ICG蛍光リンパ管造影と5%パテントブルーを末梢皮下に注入するのがリンパ管同定に有用です。リンパ管が術野で青く染色され,その都度ICG蛍光リンパ管造影で確認する必要がないので手術中のストレスが軽減します。集合リンパ管は通常,浅筋膜下にあり,鈍的な剝離で切れることなく周囲の脂肪組織からわけることができますが,線維化の強い症例では,ICG蛍光リンパ管造影でも描出力が低下するので,染色により肉眼でリンパ管が確認できます。

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