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古細菌による感染症研究の現状は?【菌の形態をとらえ100以上のDNA配列を提示し臨床像と治療法を報告。培養は不成功】

No.4884 (2017年12月02日発行) P.62

﨑山佑介 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経病学)

髙嶋 博 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経病学教授)

登録日: 2017-11-30

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  • 鹿児島大学・髙嶋 博教授のグループが「古細菌感染症」のあることを発見し,認知症の症状がST合剤の使用で改善したとの報道が以前ありました。他の原因不明の慢性感染症も古細菌が原因である可能性があり,米国医学雑誌にも発表されるとありました。本研究のその後の経過はどうでしょうか。

    (鹿児島県 H)


    【回答】

    筆者らが世界で初めて古細菌による感染症を報告したという記事を読まれて疑問に思われた方も多いかもしれません。具体的には,古細菌による脳脊髄炎なのですが,なぜそれが古細菌によるものなのか,どのように証明したのか,現状はどうなっているのか,についてご説明したいと思います。

    発端者は南九州在住の認知症の40歳代男性です。他院でアルツハイマー型認知症と診断されていましたが,家族の希望で来院しました。進行が速く,脳MRIや髄液検査で異常データがみられたことから感染症や免疫性疾患と考えられましたが,かなりの精査でも原因がわからず,Whipple病などの特殊な感染症が想定されました。

    診断が難しく認知症が高度であったため,脳生検を行いWhipple病の証明に必要なperiodic acid-Schiff(PAS)染色で脳組織を観察したところ脳血管周囲に赤色調に染まる大小不同の球体が存在していました。さらに電子顕微鏡による検査では,大きさが2~7μmで球形または卵形,中には三角状のものもあり,細胞質内には膜構造があるものの,核や細胞壁を欠いていました。この形態は明らかにWhipple病とは異なるもので,真正細菌よりもサイズが大きく真核生物である真菌や原虫に近いものでしたが,一方で核がみられない点で真菌や原虫とは異なりました。この菌はPAS陽性であり,臨床的な“カン”によりST合剤で治療したところ,ほぼ寛解しました。

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