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消化管外科学[特集:臨床医学の展望2014]

No.4684 (2014年02月01日発行) P.42

前原喜彦 (九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科教授)

登録日: 2014-02-01

最終更新日: 2017-09-25

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消化管外科学の発展におけるエビデンス創出の重要性と今後の課題

近年,消化管外科領域では食道癌,胃癌,大腸癌の診療ガイドラインが発刊されており,日常診療の場面で広く用いられている。一般的にガイドラインによる効果としては,①最新の臨床研究に基づいた質の高い診療の普及,②標準治療を策定する機会の提供,③推奨される診療の可視化とコミュニケーション・ツールとしての側面,などが挙げられる。ガイドラインの根幹をなすものは,前向き比較試験や質の高い臨床研究から得られたエビデンスであり,これからの消化管外科学の発展のためには,さらにレベルの高いエビデンスの創出が重要であることは言うまでもない。

治療成績の進歩が著しい進行再発大腸癌に対する化学療法に関しても,これまで数多くの前向き比較試験がその発展に貢献してきた。理論的に,あるいは基礎研究の結果有効と考えられるいかなる治療法も,最終的には前向き臨床試験をもってしないと臨床的有用性は証明されない。

2013年,ASCO(American Society of Clinical Oncology)で発表されたnew EPOC試験はそのよい例であろう。本試験は切除可能肝転移に対する周術期化学療法にセツキシマブを上乗せした効果を検証する試験であったが,予想と裏腹にPFS(progression free survival)において化学療法単独群の成績が明らかに上回り,本試験には早期中止が勧告された。

治療レジメンの相性の問題,補助治療としての分子標的薬の有用性の問題,RAS野生型の絞り込みの問題など議論は絶えないが,いずれにしても,切除可能および切除可能境界の大腸癌肝転移症例に対する化学療法とセツキシマブの併用は否定された。しかし,本試験が我々に与えたより重要なことは,標準治療を産み出すものは,臨床試験によるエビデンスの積み重ねであることの再認識だったかもしれない。

一方,外科手術のエビデンスに関しては,いくつかの問題をはらむ。例えば,食道癌における3領域リンパ節郭清,直腸癌における側方リンパ節郭清などは,我が国で実施されたいくつかの後ろ向き研究の結果を基に,標準治療の1つと見なされている。しかし,いずれの術式も,これまで前向き比較試験によって有用性が示されたことはなく,ある意味暫定的な標準治療と言える。また,鏡視下手術は消化管癌治療においては日常診療として広く普及しているが,現時点でガイドライン治療として認められているものではない。

これらの問題は,外科手術の前向き比較試験の難しさや,海外のエビデンスを我が国にそのまま外挿することの不確かさがその背景にあるように思える。消化管癌の治癒を目指すためには外科手術は最も重要な治療であるため,今後いかに良質のエビデンスを構築していくかが課題であろう。

筆者らは,九州消化器癌化学療法研究会(Kyu­shu Study group of Clinical Cancer;KSCC)を組織し,これまで126医療機関(2013年6月現在)により消化管癌診療における19の臨床試験を行ってきた。今後さらに研究を重ねることで,九州発のエビデンスが,次代の消化管外科学の発展のために少しでも寄与できればと願って止まない。

最も注目されるTOPICとその臨床的意義
TOPIC 3大腸癌肝転移に対する治療戦略
切除不能大腸癌肝転移ではconversion therapyにより根治切除可能となる場合がある。最適なレジメン探索のため,我が国で進行中の「KRAS野生型の大腸癌肝限局転移に対するmFOLFOX6+ベバシズマブ療法とmFOLFOX6+セツキシマブ療法のランダム化第Ⅱ相臨床試験」(ATOM試験)が有望である。また,周術期化学療法ではEX PERT試験,補助化学療法ではJCOG0603試験と,大腸癌肝転移治療戦略に関しては我が国で行われている臨床試験がカギとなる。

この1年間の主なTOPICS
1 ‌変わりつつある食道癌手術 ─鏡視下手術導入とハイリスク症例への手術適応拡大
2 急速に普及する胃癌に対する腹腔鏡下手術
3 大腸癌肝転移に対する治療戦略
4 臨床応用に向けた合理的な内視鏡外科デバイスの開発
5 臨床試験から医師主導治験へ

TOPIC 1▶‌変わりつつある食道癌手術 ─鏡視下手術導入とハイリスク症例への手術適応拡大

食道癌は消化器癌の中で最も予後不良な疾患で,根治術には頸胸腹のアプローチを必要とし,きわめて侵襲が大きい。しかし,診断技術の向上,リンパ節郭清を中心とした術式の改善,周術期管理の確立に加え,エビデンスに基づく補助療法の導入など様々な要因により,切除後の予後は次第に改善されてきた。日本食道学会の最新の全国登録(2006年)によると,術後の5年生存率は48.0%と,切除可能例では半数に根治が得られるようになってきた。

近年,各外科的疾患で鏡視下手術が急速に増加してきた。食道癌に対しても,侵襲を軽減する目的で1992年にCuschieriが胸腔鏡下食道切除術(video-assisted thoracoscopic esophagectomy;VATS-E)を考案して以来,我が国でも徐々に導入されてきた。VATS-Eは胸壁破壊の回避により術後早期の回復につながるとともに,拡大視効果により微細解剖の確認が可能となり,リンパ節郭清精度の向上が期待できる。さらに,モニター画像により術野を共有でき,チーム医療や教育の面でも有利である。

具体的な術式として,以前は開胸手術と同様に左側臥位で行われることが多かったが,最近では腹臥位でVATS-Eを行う施設も増えている。腹臥位では肺が前方に移動し,滲出液が前縦隔に溜まることにより,術野の展開が容易となる一方で,上縦隔の術野展開は側臥位のほうが優れているという意見もある。

鏡視下手術は,このように多くのメリットを有するが,胸腔鏡下手術は腹腔鏡下手術に比べて鉗子操作が容易でないこと,気道や大血管の損傷が生じた時には致死的となりかねないことが問題となっている。さらに成績についても施設間で違いがあり,食道癌治療ガイドラインにおいても,現時点では研究段階の治療として扱われている。根治性,低侵襲性を含めた大規模な比較試験が望まれる1)

一方,ハイリスク食道癌に対する治療はなお未解決の問題として残っている。食道癌は高齢者や喫煙・飲酒家での発生率が高く,肺・肝疾患などの併存症を有することが多い。また胃癌や頭頸部癌の合併も多い。根治的化学放射線療法の機会の増加とともに,その後の遺残・再燃に対するサルベージ手術が増加している。このようなハイリスク症例では,厳密な手術適応と侵襲の軽減と確実な手技に基づく手術を行うことが重要である。

具体的には,切除と再建を分けて行う二期手術や血管吻合,筋弁補強などの形成外科的手技の導入で,手術適応の拡大を図ることが可能となる2)。このためには,外科,耳鼻咽喉科,形成外科等の各科のみならず,医療スタッフ間の連携を密にすることが必須である。

今後,鏡視下手術の確立と安全性・侵襲性の検証を行う一方で,ハイリスク症例に対しても集学的治療の一環として外科的切除を適応することにより,成績向上につなげる必要がある。
(森田 勝)

◉文 献

1)Watanabe M, et al:Surg Today. 2013;43 (3):237-44.

2)Morita M:Ann Surg Oncol. 2013;20(7): 2434-9.

TOPIC 2▶急速に普及する胃癌に対する腹腔鏡下手術

現在,「臨床病期Ⅰ期胃癌に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術の開腹幽門側胃切除に対する非劣性を検証するランダム化比較試験」がJCOG(Japan Clinical Oncology Group,日本臨床腫瘍研究グループ)胃癌グループにおいて実施中であり,少なくともこの試験の結果が出るまでは早期胃癌に対する腹腔鏡下手術は標準治療とは言えない。2010年発刊『胃癌治療ガイドライン』(第3版)1)においても,腹腔鏡下手術は「標準治療として推奨されていないが,有望とされる研究的治療」と位置づけられている。しかし一方では,内視鏡外科学会の調査で2011年には年間8000例以上の腹腔鏡下胃切除術が国内で行われるようになっており,実地診療においては早期胃癌に対する幽門側胃切除のみにとどまらず,胃全摘術や進行胃癌に対する適応拡大まで広く施行されたことを表している。このことは,おそらく腹腔鏡下手術に習熟した消化器外科医が増加し腹腔鏡下手術の有用性を実感していることと,社会的にもその要求が高いという現状からきていると言えよう。

胃癌に対する腹腔鏡下手術における最近の報告を見てみると,手術手技の進歩に関するものと進行胃癌に対する治療成績に関するものが目立つ。ビルロートⅠ法における吻合法として,筆者らはこれまでデルタ吻合を行って良好な成績を上げてきたが2),十二指腸の剥離操作が最小限で済み,虚血域が少なく,また吻合口が広い三角吻合法(book binding technique;BBT)を開発し報告した3)。これまで30例以上に対して施行しているが,操作も簡便であり,吻合部関連合併症はまったく認めていない。

一方,進行胃癌に対する腹腔鏡下手術の適応拡大の是非に関しては議論の余地がある。当科において腹腔鏡下手術が施行されたⅠB期~Ⅲ期進行胃癌症例の手術成績と予後を検討したところ,郭清リンパ節個数,出血量,手術時間,術後合併症の手術因子のみならず,長期成績も開腹手術に引けを取らない結果であった4)。しかし,あくまでもこれは単施設の後ろ向き研究の結果であり,我が国で前向き比較試験が行われない限り,標準治療として認められるものではない。

胃癌に対する腹腔鏡下手術は,“ガイドライン治療”としての位置づけと,“実施診療”とが乖離しているのが実情であり,我が国の胃癌診療にとって望ましい状況とは言えない。現段階では,臨床医はあくまでも研究的治療であることの認識を持って腹腔鏡下手術を行うべきである。その一方,臨床現場の現況を鑑みるに,海外発信のエビデンスを我が国のガイドラインに外挿してでも胃癌に対する腹腔鏡下手術の位置づけを拡大すべきであるという意見もある。しかし,国内外で胃癌の手術成績に大きな差があるという本質的な問題が存在するため,そのことは慎重に評価する必要があろう。いずれにしても,現在我が国で行われている大規模臨床試験の結果が待たれる。
(佐伯浩司)

◉文 献

1) 日本胃癌学会, 編:胃癌治療ガイドライン. 第3版. 金原出版, 2010, p30-2.

2) Oki E, et al:Eur Surg Res. 2011;47(4):205-10.

3) Ikeda T, et al:Surg Endosc. 2013;27(1): 325-32.

4) Saeki H, et al:Fukuoka Acta Med, in press.

TOPIC 3▶大腸癌肝転移に対する治療戦略

大腸癌肝転移は根治切除が得られれば5年生存率は30~50%と言われている。

診断時に切除可能である大腸癌肝転移症例は10~20%とされており,残りの80~90%は切除不能と診断される。これらの症例には全身化学療法を行うが,30~40%は奏効が得られ,根治切除術へ移行できる,いわゆる“conversion therapy”が可能となる。最適なconversion therapyを探るため,これまで多くの臨床試験が行われてきた。

2013年,ASCOではCELIM試験(切除不能肝転移を有する大腸癌症例を対象としたFOLFOX 6+セツキシマブ療法,FOLFIRI+セツキシマブ療法)のアップデートが報告された1)。全生存期間は35.7カ月,5年生存率は27.5%であり,R0切除を施行した症例の5年生存率は46.2%であった。どちらの群でも良好な成績が得られている。このようにconversionが得られ,根治切除ができれば良好な成績を得ることができる。

現時点での切除不能肝転移に対する治療方針は,KRAS変異型の場合,原発巣からの出血や閉塞症状がなければベバシズマブを併用した化学療法を選択することが合理的である。KRAS野生型の場合では,初期治療にベバシズマブを使用するか,抗EGFR(epidermal growth factor receptor)抗体薬(セツキシマブ,パニツムマブ)を使用するかはまず肝転移の状況を考慮する。両葉に多数の転移がある場合や肝内の重要脈管に癌の浸潤がある場合など,将来的にも切除が難しいと考えられる場合は長期的に治療を継続する予定とし最適なレジメンを選択する。

これまでに行われたCRYSTAL試験,PRIME試験,OPUS試験などの抗EGFR抗体薬を使用した臨床試験の結果から勘案すると,ベバシズマブより抗EGFR抗体薬のほうが縮小率の上乗せ効果が高い傾向にある。このため,conversion therapyを目指す際には,抗EGFR抗体薬を選択してもよいと考えられる。

現在,我が国ではKRAS野生型の大腸癌肝限局転移に対するmFOLFOX6+ベバシズマブ療法とmFOLFOX6+セツキシマブ療法のランダム化第Ⅱ相臨床試験(ATOM試験)が進行中である。この結果により大腸癌肝転移に対する治療戦略がさらに深まるものと期待される。

では,肝転移切除後の術後補助化学療法についてはどうであろうか。肝転移切除後の再発率は50~70%と高く,再発予防の術後補助化学療法が検討されている。これまでENG試験やFFCD 9002試験が行われてきたが,生存率において有意差を認めなかった。ほかにも術後補助化学療法の有効性を示唆する報告はあるが,明確なエビデンスはない。我が国で肝転移根治切除例を対象に手術単独群をコントロールアームとしてFOLFOX療法群の有効性を検証する第Ⅲ相試験(JCOG 0603試験)が進行中である。この結果により,肝転移切除後の術後補助化学療法の位置づけがなされると考えられる。

また,切除可能肝転移に対する術前化学療法に関しては2013年のASCOでNew EPOC試験が報告された2)。本試験では切除可能肝転移に対する周術期化学療法にセツキシマブを上乗せした効果を検証した。しかし,PFSにおいて化学療法単独群20.5カ月,セツキシマブ併用群14.1カ月であり,本試験は早期中止された。今のところ周術期化学療法に対する分子標的薬併用は,臨床試験以外では用いにくい。現在,我が国でEXPERT試験が進行中である。


このように,大腸癌肝転移の治療に関しては,国内で行われている臨床試験が将来重要な意味を持つ可能性が高い。上記の臨床試験のほか,手術法についても,腹腔鏡による大腸癌と肝転移の同時切除の検討などの取り組みも国内で行われている3)
(安藤幸滋)

◉文 献

1)Folprecht G, et al:2013 ASCO abstract♯3538.

2)Primrose J, et al:2013 ASCO abstract♯3504.

3)Ando K, et al:Surgery Today. 2013 Dec 17 [Epub ahead of print]

TOPIC 4▶臨床応用に向けた合理的な内視鏡外科デバイスの開発

内視鏡下手術とは体腔(腹腔,胸腔,関節など)あるいは人工的に作成した体内のスペースへ内視鏡や専用の手術器具を挿入し,モニター上に展開される映像を見ながら行う手術の総称である。

現在の手術の多くが一般化した19世紀末以来,20世紀後半に至るまで,癌治療に関する手術治療は,術後の生体機能,QOLを犠牲にしても,それを凌駕する根治性を得ることにより容認されるという考えに基づく,いわゆる拡大切除が全盛であった。しかし,診断技術の進歩から,癌においても転移の可能性がきわめて低い早期癌の発見の頻度が増加し,進行癌においても,化学療法,放射線療法をはじめとする手術以外の治療手段の開発と成績の向上により,必要最低限の外科的切除を組み合わせた集学的治療の時代へと変遷した。このような治療方針の変化が,病巣へアプローチする際の正常組織への損傷がきわめて少なく,手術侵襲が軽減できる内視鏡下手術への流れを急速化させ,内視鏡下手術は瞬く間にすべての消化器外科手術に適応されるに至り全世界に広まった。

外科内視鏡の進歩は,同時期に始まったアナログからデジタルへの映像革命に基づくものである。デジタル映像は,これまでのカメラのフィルムの代わりに1970年に米国Bell研究所のBoyleとSmithによって開発されたCCD(charge-coupled device,画像を電気信号に変える部分)センサーをイメージセンサーとして用いることで解像力,感度とも改善され,小型化された。時を同じくして開発されたメタルハロゲンやキセノン電球を使用した光源装置との組み合わせで,明るく鮮明な視野を得ることができるようになった。CCDで得た電気信号を加工して画像ファイルへの変換を行う半導体であるいわゆる「映像エンジン」と,最終的に画像に映し出すモニターの開発も一般のデジタルカメラやデジタルビデオの開発とともに進み,現在では明るく肌理の細かな術野を数倍程度まで拡大して映し出すことが可能となった。そして,外科局所解剖の解明にも貢献し,膜解剖の理解が深まり,en blocなリンパ節郭清手技が確立してきた1)

通常の内視鏡下手術は,いかに画質が向上したとはいえ片眼による2次元映像であるが,CCDと画像処理技術のさらなる改良の結果,両眼を有する3次元内視鏡も開発され,内視鏡での立体映像が実現した。3次元画像は両眼を有するが故に回転することが困難で硬性鏡では直視のみであったが,最近開発されたジャイロセンサーによって傾きを認識し補正することも可能となり,3次元の斜視硬性鏡も現実のものとなった。縫合,吻合などをすべて腹腔内で行う完全鏡視下手術の手技の安定につながっている2)

インドシアニングリーン(ICG)の蛍光特性を利用した近赤外線カメラが開発され,血流や胆管の同定が行われているが3),今後の展望としては,ハイパースペクトル情報を取得できる内視鏡の開発と,すでに診断内視鏡に応用されている100倍以上の拡大機能を外科内視鏡にも適応することにより,消化器癌に対する内視鏡下手術において,手術と同時に,観察された腫瘍の良悪性の判定,腫瘍の漿膜面への浸潤の程度の判定,腹膜播種やリンパ節転移の診断を行うことが可能な外科内視鏡の開発が期待される。
(池田哲夫)

◉文 献

1)Oki E, et al:J Am Coll Surg. 2011;212(5): e25-7.

2)Ikeda T, et al:Surg Endosc. 2013;27(1): 325-32.

3)Tagaya N, et al:J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2010;17(5):595-600.

TOPIC 5▶臨床試験から医師主導治験へ

癌治療の開発には創薬開発と臨床試験の両輪が必須である。過去日本は創薬開発では世界をリードしていたが,臨床試験の分野では世界に大きな後れをとっていた。現在,世界中で使用されているオキサリプラチン,塩酸イリノテカンやカペシタビンなどは日本国内で開発が進んだにもかかわらず,臨床試験の遅れから日本国内での臨床での使用は海外に遅れることになった。その反省も含めて1990年代に入ると,消化器領域でも日本国内で大規模な臨床試験が行われるようになってきた。また,厚生労働省の新薬の審査も迅速となり,現在では使用できる新規薬剤は海外と同等となってきている。

現在,JCOGをはじめとして日本には多くの臨床試験グループが組織されている。その中で九州消化器癌化学療法研究会(Kyushu Study group of Clinical Cancer;KSCC)は,国民的な課題である消化器癌の治療方法を研究するために2005年4月に設立された。KSCCには現在,大学病院や地域の中核医療機関の癌治療に積極的に取り組む126医療機関(2013年6月現在)が参加し,治療方法の研究に携わっている。KSCCは設立から今年9年目を迎え,すでに19の臨床試験を行い,試験によって得られた結果について,国際的な医学学会や学術誌で公表している1)~3)。そのうちのKSCC0701試験はFOLFOX6療法とFOLFIRI療法を4コースごとに交互に繰り返す,一次治療としては世界初の交替療法に関するPhaseⅡ試験であった3)。現在,ランダム化PhaseⅡ試験として直腸癌のFOLFOX6療法とSOX療法を比較する試験が進行している。

このように日本国内に多数構築されている各臨床試験グループがオリジナリティーの高い臨床試験を積極的に行い,市販後の臨床試験の分野では海外と変わらない環境となってきた。しかし,新しいシーズに対する医師主導の治験においては,未だに欧米諸国と大きな開きがある。国内の臨床試験グループによるほとんどの臨床試験は,市販後の薬剤について製薬企業からの寄付や受託で行われており,自由な発想の治療法や研究室で開発された薬剤の治験が活性化されているわけではない。欧米では多くのベンチャー企業や大学が新薬の開発にしのぎを削り,特許を取得して薬剤として臨床現場に登場させる。したがって,それらを日本で使用するには特許料を含めて,きわめて高額にならざるをえない状況である。

今後,日本が世界に立ち後れないためにはアカデミア発の治療薬開発が重要となってくる。2003年の薬事法改正以降,医師主導の治験が行える環境にはなっているものの,まだ医師全体の理解は薄く,医師主導治験は一部の医師やCRC(clinical research coordinator)などの臨床試験支援機関の努力だけで行われている。今後,基礎分野で開発された新しいシーズに対する治験を活性化するためには,ICH-GCP(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use, Good Clinical Practice)に対する正しい理解と,何らかの公的機関による臨床試験への積極的な関与が必要である。
(沖 英次)

◉文 献

1)Baba H, et al:Surg Today. 2011;41(12): 1610-6.

2)Emi Y, et al:Int J Clin Oncol. 2013;18(2): 254-9.

3)Oki E, et al:Oncology. 2013;84(4):233-9.

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