2013年における推定母体血清マーカー検査数は2万6400件,推定羊水検査数は2万600件であった
2013年の約103万出生において,妊娠中に何らかの出生前遺伝学的検査が実施された割合は約5.3%と推定される
無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)は,日本医学会の施設認可のもと,臨床研究として実施されており,2013年4月〜14年に約2万件実施された
出生前遺伝学的検査は,妊婦健診のルーチン検査の1つではなく,あくまでもカップルの希望により遺伝カウンセリングの後に行う
出生前遺伝学的検査の取り扱いについては,産婦人科医だけではなく社会全体で考えるべき事象である
女性の社会進出や晩婚・晩産化に伴い,妊娠女性の平均年齢は上昇傾向にあり,加えて高度先進生殖技術によってさらなる高齢女性の妊娠も可能となってきた。母体(卵子)が高齢になるほど,児の一部の染色体疾患の発生率が高くなることは,一般的によく知られている。また,従来の細胞を用いた染色体検査のみならず,近年のゲノム解析技術の進歩により様々な新しい診断法が開発され,臨床の現場である出生前診断の領域においても応用が拡大しつつある。
わが国において広く知られる出生前遺伝学的検査は羊水検査で,1967年,Jacobsonら1)によって初めて報告された。これは胎児由来細胞を侵襲的に採取し染色体検査によって確定診断を行う方法(確定検査)の1つであり,羊水検査のほかに絨毛検査,胎児血検査が挙げられる。一方,このような侵襲的手技を伴わず,一部の染色体疾患の罹患リスクを各種マーカーなどにより推定する方法(非確定検査)としては,超音波スクリーニング,母体血清マーカー検査,その両者を組み合わせたコンバインドテスト,また,母体血中胎児free DNAを用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査(non invasive prenatal genetic testing:NIPT)が含まれる。本稿では,主に染色体疾患を対象とした出生前遺伝学的検査を中心に,わが国の現状について詳述する。
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