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医療用大麻とは

No.4691 (2014年03月22日発行) P.62

竹田修三 (広島国際大学薬学部環境毒物代謝学教室准教授)

登録日: 2014-03-22

最終更新日: 2017-08-03

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【Q】

わが国において大麻はタブー視されるが,米国においては医療用大麻の使用が合法化されている地域があり,最近では嗜好用についても合法化する法律が制定された州もあると聞く。医療用大麻とはいったいどういうものか。どのような疾患に有効で,どういうメリットが存在するのか。また,精神依存,身体依存はアルコールやたばこと比較してどうか。最新の知見をもとに。(大分県 H)

【A】

海外では,医療用大麻が臨床使用されている地域がある。わが国では医療用であっても禁止されている。時として,大麻使用はコカインなどのより強力な乱用薬物につながり,長期使用で精神障害をきたす危険性がある

医療用大麻とは

医療用に使用される大麻は,医療用大麻と呼ばれている。大麻とは,わが国では「大麻取締法」で規制される大麻草(茎や根を除く)のことを言う。大麻には特異な構造を有する成分としてカンナビノイドが含まれている。現在までに,約70種類以上の成分が単離され,構造が決定されている。これまで大麻は乱用の観点から注目されてきたが,米国やカナダなどの諸外国ではその有用性が注目され,医療用大麻としての地位を獲得しつつある。
医療用大麻の例として,英国のGWファーマシューティカルズ社によって製造開発されたナビキシモルス(サティベックス)が挙げられる。サティベックスは天然の大麻抽出物であり,カンナビノイドとしてテトラヒドロカンナビノール(tetrahydrocannabinol;THC)とカンナビジオール(cannabidiol;CBD)(図1)を含む溶液で口腔内に噴霧して用いる。成分がカンナビノイド受容体に作用することにより,モルヒネとは異なる作用機序を介して鎮痛効果を示す。

現在,がん疼痛治療はWHO推奨の方法で行うのが通常であり,モルヒネなどの麻薬を中心とした治療が行われる。しかし,モルヒネは,がん患者の約30%にみられる神経因性疼痛に対して有効性が低いことが知られている。サティベックスは,この神経因性疼痛の軽減に有効である可能性が示唆されている。わが国では,大麻は大麻取締法の厳しい法規制下にあり,大麻から製造された医薬品を用いることはできず,たとえ医療用であっても使用,輸入ならびに所持は禁止されている。

大麻依存症

大麻の乱用を繰り返すことによって摂取欲求が抑えられない渇望が現れて,精神依存が形成される。大麻乱用者は,大麻依存を契機としてコカイン,リゼルギン酸ジエチルアミド,ヘロインなど,より強力な乱用薬物に移行する場合があり,入門薬物(gateway drug)になることが問題とされている。さらに,大麻を長期間にわたり乱用することで記憶・認知などに障害をきたし,精神障害を発症する危険性が示唆されている1)

大麻は嗜好品か否か

英国で実施された研究で,アルコールは,大麻やたばこよりも有害であるという結果が2010年に発表されたことは記憶に新しい2)3)。この論文では,死亡率,依存度,精神への影響などのカテゴリーに分類・数値化して比較した結果,アルコール>たばこ>大麻の順となっている。注目すべきは,社会的に害のある薬物として,ヘロインやコカインが上位に挙げられていることである。この研究での大麻の位置づけは低いが,先にも述べたように,大麻はコカインなどのより強力な薬物の乱用につながる入門薬物であることから,大麻の使用により引き起こされうる問題は看過できるものではない。
2012年,米国のコロラド州とワシントン州において,大麻がアルコールやたばこと同じ嗜好品として認められ,合法化された。しかし,米国連邦政府は,大麻が違法薬物であるとの立場を堅持しており,同一国内においても混乱が表面化している。

わが国における医療用大麻の今後

医療用大麻の使用については国際的に様々な議論が展開されている。冒頭で医療用大麻の米国での現状について述べたが,米国では現時点で20の州が医療用大麻を許容している。しかし,国際連合の機関である国際麻薬統制委員会(International Narcotics Control Board;INCB)は,神経因性疼痛を含めた疾患に対して大麻を医療用大麻として使用することを容認していない(2009年次報告書)。
最近,γ–アミノ酪酸(GABA)誘導体のプレガバリン(図1)(リリカカプセル)が神経因性疼痛に有効な治療薬として,わが国でも承認された。リリカは世界各国で承認され,神経因性疼痛の第一選択薬として推奨されている。現段階で,神経因性疼痛に対してサティベックスがリリカよりも優位性を示すという報告はない。
筆者らは,カンナビノイド関連化合物の中から,既存の医薬品とは作用機序が異なり,明らかな有用性を示す化合物を見出すことをめざしている4)〜6)。そのためにはさらなる研究の必要性がある。

【文献】

1)Moore TH, et al:Lancet. 2007;370(9584): 319-28.
2) Nutt DJ, et al:Lancet. 2010;376(9752):1558-65.
3) van Amsterdam J,et al:Lancet. 2010;376 (9752):1524-5.
4) 渡辺和人, 他:北陸大学紀要. 2004;28:17-32.
5)Takeda S, et al:Chem Res Toxicol. 2013;26: 1073-9.
6)竹田修三:薬誌. 2013;133(10):1093-101.

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