株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

(1) 酸分泌抑制薬の歴史 [特集:酸関連疾患の治療はどのように変わるか]

No.4751 (2015年05月16日発行) P.20

伊藤公訓 (広島大学病院消化器・代謝内科診療准教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 酸分泌抑制薬の主流は,H2受容体拮抗薬(H2RA)からプロトンポンプ阻害薬(PPI)にシフトしてきた

    H2RAとPPIにはそれぞれの特性がある

    近年,日本人の胃酸分泌量は確実に増加しており,酸関連疾患制御の重要性は確実に増加している

    1. 胃酸の意義と酸関連疾患

    胃酸は胃体部の壁細胞から分泌されるpH 1〜2の塩酸である。元来,胃酸は消化吸収に重要な役割を持ち,蛋白分解酵素であるペプシンの活性化や,カルシウム,鉄などの無機質の吸収に寄与している。さらには,経口的に侵入する病原微生物などを殺菌する効果も併せ持つ。
    その一方で,胃酸は強力な組織傷害性も有しており,従来より病的因子としての側面が強調されてきた。その代表的なものは消化性潰瘍(胃十二指腸潰瘍)であるが,胃食道逆流症(逆流性食道炎,Barrett食道)のみならず機能性胃腸症などにおける胃酸の病原性が注目されつつある。臨床においては,これらの病態を改善させる目的で,酸分泌抑制薬が開発,使用されてきた。

    2. 制酸薬の時代

    1970年代に胃X線撮影法や上部消化管内視鏡検査が開発されたことで,消化性潰瘍の臨床診断が可能となった。しかし,当時は胃酸を制御することは容易ではなく,消化性潰瘍は「難治性疾患」であった。
    消化性潰瘍の治療には,Shy 1)のバランス説に示されるように,強力な粘膜傷害因子である胃酸の酸度を低下させることが重要であることは当時より理解されていた。そこで胃酸を中和する目的で,抗コリン薬や酸化マグネシウムなど酸中和剤が使用されていたが,これらの薬剤の作用時間はきわめて短時間であり,潰瘍治癒効果も限定的であった。そのため,当時の消化性潰瘍は入院治療を必要とし,いったん消化管出血を併発すれば致死的な経過をとることも稀ではなかった。当時の難治性消化性潰瘍は外科的治療(手術)が主流であり,胃酸分泌を抑制するため,広範囲胃切除術や迷走神経遮断術が施行されていた。

    残り2,870文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top