株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

四肢痙縮の治療【障害に応じた治療法の選択が可能に】

No.4855 (2017年05月13日発行) P.51

芳賀信彦 (東京大学リハビリテーション医学教授)

登録日: 2017-05-11

最終更新日: 2017-05-09

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

脳血管障害,脊髄損傷,脳性麻痺などに合併する四肢筋の痙縮は,関節の滑らかな動きを妨げ,疼痛の原因ともなり,患者のADL障害につながる。従来は経口薬投与,徒手または装具などを用いた筋ストレッチ,神経ブロックなどが行われていた。

抑制性神経伝達物質GABAの誘導体であるバクロフェンの経口薬(ギャバロン®)は,血液脳関門を通過しにくいことから痙縮に対する効果が不十分であった。2006年にバクロフェン髄腔内投与(ITB)が保険適用となり,少量で目的とする部位の筋痙縮を軽減できるようになった。投与前スクリーニング検査で有効性を確認した場合に,薬剤投与用ポンプとカテーテルを埋め込む手術を行う。体外から投与量が調節できるため,症状に応じた治療が可能であり,広い範囲の痙縮に適している。

一方,ボツリヌス毒素を用いた痙縮治療は,09年に脳性麻痺の尖足,10年に上肢痙縮・下肢痙縮に適応となった。筋肉内注射により神経筋接合部のアセチルコリン放出を抑制するため,神経ブロックのように神経近傍に注射する必要がなく,また,感覚障害を起こすリスクも少ない。効果のピーク時に一過性の筋力低下が生じる,効果減弱のため数カ月ごとの投与が必要である,といった問題点はあるが,適切な筋肉に適切な量を投与することで,目的とする効果が得られる。

このほか,脳性麻痺児の下肢痙縮に対する選択的脊髄後根切断術など,四肢の痙縮に対する治療法が増えており,障害に応じた選択が可能になっている。

【解説】

芳賀信彦 東京大学リハビリテーション医学教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top