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(3)ロボット支援下肺切除術 [特集:期待される肺癌の低侵襲手術]

No.4735 (2015年01月24日発行) P.28

中村廣繁 (鳥取大学医学部器官制御外科学講座胸部外科学分野教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-15

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  • ロボット支援手術の最大の利点は,3次元視野下に関節を有する自由度の高い鉗子を用いて巧みな手術操作ができるところである

    呼吸器外科領域のロボット支援手術導入は全体的にまだ遅れている

    肺癌に対するロボット支援手術の初期成績を見ると安全な導入がなされている

    肺癌に対するロボット支援手術は胸腔鏡下手術(VATS)の弱点を補い,今後は有用性を示すデータが蓄積されていくことが期待される

    肺癌に対するロボット支援手術は現在先進医療,保険収載に向けて準備が急がれている

    1. ロボット支援手術とは

    手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)は1999年に米国のIntuitive Surgical社によって市場に導入された。その後改良が進み,本邦では厚生労働省の薬事・食品衛生審議会が2009年11月にダ・ヴィンチSを,12年10月には最新機種ダ・ヴィンチSiを認可した。ダ・ヴィンチの本体はサージョンコンソール(Siはデュアルコンソール),ペイシャントカート,ビジョンカートの3つの部分から構成され,外科医はサージョンコンソールに座り,マスタースレーブ式の遠隔操作で手術を行う(図1)。
    ダ・ヴィンチの特徴は,①10倍まで拡大視可能な3次元視野,②7つの自由度を持つ多関節鉗子,③モーションスケーリング機能による手振れ防止,にあり,これらにより精緻な手術操作が可能で,狭い領域での複雑な手術手技を正確かつ容易にしてくれる1) 2) 。したがって,がんに対する低侵襲性と根治性を実現し,さらに機能温存を可能にする手術として期待が大きい。特に狭い部位に存在する骨盤内臓器のがんでは通常の内視鏡手術が困難なことも多く,早くからその有用性が着目された。とりわけ,膀胱直腸の神経機能・性機能温存が期待される前立腺癌に対する手術では大きな威力を発揮し,従来の開腹手術と比較すると痛み,出血量,早期社会復帰,術後の生活の質(quality of life:QOL)など,いずれも上回る成績が出ており,欧米では爆発的に普及している。
    本邦では諸外国と比較してロボット導入が遅れていたが,2012年4月の前立腺癌に対する保険収載以降,一気に加速し,14年11月現在では約180台が導入され,世界で第2位,アジアでは第1位の手術用ロボット保有国となった。いよいよ本格的なロボット支援手術(以下,ロボット手術)時代の到来となった。

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