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(1)イレウスの診断 [特集:再発させないためのイレウス治療]

No.4733 (2015年01月10日発行) P.18

篠塚 望 (埼玉医科大学消化器一般外科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-14

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  • イレウスの診断では,問診,腹部身体所見,臨床検査および画像検査の結果を総合的に判断する

    イレウスの診断において最も重要なことは,緊急手術が必要な絞扼性イレウスを適切に鑑別することである

    画像診断の進歩は著しいが,症状や腹部理学的所見の時間的変化を見逃さないことが大事である

    1. 緊急手術が必要なイレウスを見逃さない

    イレウス(腸閉塞)は腹痛・腹満・嘔吐などの症状で受診することが多いが,通過障害の部位や原因によりその病態は様々である。イレウス自体の診断は比較的容易なことが多いが,その原因やイレウスの種類の精査が重要であり,診断のポイントもその点につきると言っても過言ではない。
    イレウスの分類としては,機械的イレウスと機能的イレウスに分けるのが一般的であるが(表1),機械的イレウスの中でも循環障害を伴う絞扼性イレウスは緊急手術が必要であり,これを見逃さないことがイレウス治療として最も重要である。
    最近では画像診断の進歩により,より正確にイレウスの原因や閉塞部位診断ができるようになった。しかし,従来の腹部所見や全身状態の掌握も当然ながら重要であり,特に初診時に保存的治療を選択した場合,症状や腹部所見の経時的変化は,その後の治療を選択する上できわめて重要であり,この点に関しては従来と考え方は変わっていない。
    以下にイレウス診断のポイントなどを記す。

    2. 症状と所見

    主な症状としては,腹痛,腹部膨満,嘔気・嘔吐,排ガス・排便の停止などがある。腹痛は軽いものから激痛を伴うものまで様々であるが,絞扼性イレウスでは激しい腹痛や圧痛,筋性防御などの腹膜刺激症状を認めることが多い。しかし,高齢者や若年者では絞扼性イレウスでも腹部症状が軽度のことがあり,注意を要する。また,直腸癌のような器質的閉塞では便秘や下痢,下血を伴うこともあり,直腸指診も必ず施行されるべき検査である。
    さらに,次項にも述べるように,既往歴としての開腹歴や過去の腹部手術創の確認,癌の既往の有無などを聴取するなど,問診もイレウス診断には重要なポイントである。

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