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勇気ある決断?[お茶の水だより]

No.4851 (2017年04月15日発行) P.15

登録日: 2017-04-14

最終更新日: 2017-04-13

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▶医学部4年生の留年率が大幅に上昇している。全国医学部長病院長会議が実施した「医学生の学力に関するアンケート調査」によると、2015年度の4年生の留年率は、医学部定員増(08年度)以前と比べて約1.4倍に増加したことが分かった。
▶従来多かった2年生の留年については、同会議は「基礎医学系の覚えるべき情報量の増加」を要因として指摘。1年生の留年率も定員増前の1.6倍程度で高止まりしているが、これには自己学習意欲に欠ける学生の増加が考えられるという。
▶一方、4年生の留年率上昇の明確な原因は不明だ。ただし、調査結果を取りまとめた福島統氏(慈恵医大教育センター長)は、「あくまで推測」としつつ、①臨床実習の時間数を増やそうと実習開始時期を早めた結果、3年生後半~4年生前半の授業がタイトになっている、②知識・技能を保証できない学生を臨床実習に出さない方針を徹底する大学が増えてきた─などの傾向を挙げた。
▶②について先日、文部科学省の担当官に見解を聞く機会を得た。担当官は「実際の患者に接する臨床実習に知識・技能が不十分な学生を出さないという判断は当然ありうる。留年率上昇は大学の評価にも関わるので、留年を決断できる大学はある意味、勇気がある」という趣旨のことを話した。
▶医学教育において臨床実習を重視する方針は世界的な潮流となっている。このほど公表された「医学教育モデル・コア・カリキュラム(2016年度改訂版)」でも、低学年から臨床現場を経験する機会が拡充された。これによって4年生の留年率がどう推移するのかは予断を許さないが、上昇・改善、どちらに転ずるにせよ、質の高い臨床医が育成されるよう、教育現場の医師にエールを送りたい。

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