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(8) リウマチ膠原病・アレルギー学[特集:臨床医学の展望]

No.4740 (2015年02月28日発行) P.49

竹内 勤 (慶應義塾大学医学部内科学教室リウマチ内科教授)

金子祐子 (慶應義塾大学医学部内科学教室リウマチ内科講師)

登録日: 2016-09-01

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  • ■リウマチ膠原病・アレルギー学のさらなる進歩

    リウマチ膠原病分野は日々目覚ましく進歩し続けている。特に関節リウマチ診療ではパラダイムシフトが起き大きく変革したが,この変革をふまえ,「関節リウマチ診療ガイドライン2014」が作成された。そのパラダイムシフトの大きな立役者である生物学的製剤は,高価であることが問題点のひとつであったが,初の生物学的製剤後発品であるインフリキシマブ・シミラーが日本で承認された。また,確立された評価法のなかったシェーグレン症候群の疾患活動性の指標としてEuropean League Against Rheumatism Sjögren’s Syndrome Disease Activity Index(ESSDAI)とEuropean League Against Rheumatism Sjögren’s Syndrome Patient-Reported Index(ESSPRI)の検証が進み,診療・研究における使用が促進した。
    そのほか,これまで研究室レベルで測定されていた抗アミノアシルtRNA抗体が保険診療で可能となったこと,全身性エリテマトーデスに対する目標達成に向けた治療(treat to target:T2T)が世界的に発表されたこと,わが国における「ステロイド骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン:2014年改訂版」が策定されたことなどが2014年のトピックである。
    アレルギー分野においては大きなトピックは目立たないが,病態研究と生物学的製剤使用により進歩を重ねている。

    TOPIC 1

    わが国における関節リウマチのガイドライン改訂

    関節リウマチは,慢性破壊性関節炎を特徴とする全身性炎症性疾患である。30~50歳代の女性に好発し,関節痛と関節破壊による変形のために著しい生活の質低下をきたす。かつては有効な治療の乏しい難病と考えられていたが,メトトレキサート(methotrexate:MTX)の少量間欠投与法の確立とサイトカインや細胞表面分子を標的とする生物学的製剤の登場により,関節リウマチ診療は大きく変革した。わが国の関節リウマチ診療ガイドラインは1997年に日本リウマチ財団が最初に発行し,2004年にこの改訂版が出版されていたが,2011~2013年度の厚生労働科学研究費補助金免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業指定研究「わが国における関節リウマチ治療の標準化と関する多層的研究」の一環として,2014年に現状を反映した「関節リウマチ診療ガイドライン2014」が作成された1)
    「関節リウマチ診療ガイドライン2014」では,Grading of Recommendations Assessment Development, and Evaluation(GRADE)システムという新たなエビデンスの質の評価と推奨度判断のためのプロセスツールが採用され,コクランレビュー2)にシステマティックレビューを追加する形でエビデンスを収集し,日本特有の状況と,製造販売後調査成績,薬価,患者アンケートから得られた価値観を加味して作成された。
    治療に関するガイドラインとして,計88のclinical questionが,MTX,MTX以外のconventional synthetic disease-modifyng anti-rheumatic drugs(csDMARDs),NSAIDs,ステロイド,biological disease-modifying anti-rheumatic drugs(bDMARDs),手術,リハビリ,その他の治療,合併症・妊娠・授乳に大きく分類され,37の推奨文に解説が加えられた。10年ぶりに改訂された本ガイドラインは現在の関節リウマチ診療に即しており,今後の診療に有用であるとともに,さらに日本リウマチ学会主導で数年おきに改訂されていく予定である。

    【文献】
    1) 一般社団法人日本リウマチ学会:関節リウマチ診療ガイドライン2014. メディカルレビュー社, 2014.
    2) The Cochrane Collaboration-Cochrane reviews.[http://www.cochrane.org/cochrane-reviews]
    (金子祐子)

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