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わが国における切迫早産に対する管理の問題点 【切迫早産へのエビデンスのない過剰な医療により妊婦のQOLを下げている可能性がある】

No.4844 (2017年02月25日発行) P.58

仲村将光 (昭和大学医学部産婦人科学講座講師)

青木宏明 (東京慈恵会医科大学産婦人科)

登録日: 2017-02-23

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  • わが国における切迫早産に対する管理の問題点について,東京慈恵会医科大学・青木宏明先生のご解説をお願いします。

    【質問者】

    仲村将光 昭和大学医学部産婦人科学講座講師


    【回答】

    早産は新生児死亡や脳性麻痺などの周産期予後と密接に関連するため,早産を防ぐことは周産期医療にとって最も重要な課題のひとつです。その早産につながる危険性の高い,切迫早産に対するわが国における管理の問題点として,過剰な医療介入が挙げられます。

    (1)子宮収縮抑制薬の使用方法
    過剰な医療介入のひとつは子宮収縮抑制薬の使用方法です。切迫早産における異常な子宮収縮に対して子宮収縮抑制を行うことをtocolysisと言いますが,tocolysisの方法は欧米とわが国とで大きく異なっています。tocolysisの効果は48時間に限られるというエビデンスから,欧米では子宮収縮が抑制されるまでに限り子宮収縮抑制薬を使う,short term tocolysisが行われています1)。一方,わが国では子宮収縮が抑えられた後も,再発を防ぐ目的で予防的に投与を行うlong term tocolysisが行われ,長期間の入院管理を行っています2)。しかし,long term tocolysisが早産を防ぐこと,新生児の予後を改善することに有効であるとするエビデンスはほとんどありません1)

    わが国で子宮収縮抑制薬として使用しているβ刺激薬は,重篤かつ多様な副作用が問題となっており1)3),近年,米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)はβ刺激薬の点滴薬は短期間の使用に限るようにと警告を出しています4)5)。また,FDAやEMAはβ刺激薬の内服薬の使用を禁止していますが,わが国では依然として使用されています。

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