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記者がDTC遺伝子検査を体験 [特集:遺伝子診断と生命倫理を考える]

No.4836 (2016年12月31日発行) P.20

登録日: 2016-12-23

最終更新日: 2016-12-21

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DTC遺伝子検査の実際を確かめるため、記者が検査を申し込んでみた。

購入したのはDeNAライフサイエンス社が提供する商品。サイトには業界団体であるNPO法人個人遺伝情報取扱協議会の「自主基準を遵守」とあり、比較的、個人情報の取り扱いが安心できるような気がしたからだ。地域限定の割引制度(4割引き)を利用し、38種類のがんについて調べる8880円の検査を申し込んだ。送られてきたケースに唾液を入れ、ポストに投函して約3週間後。サイトにログインすると、結果が出ていた。日本人平均との比較で最も発症リスクが高いがん種は1.60倍だった(図)。


詳細をクリックすると、疾患の詳しい説明があり、リスクの根拠となりそうな記載として、「上図の分布はHapmapの日本人の頻度データを利用して算出しています」「東京大学医科学研究所との共同研究でリスクの予測モデルを作成しています」との一文のほか、根拠となる論文評価レベルは三段階評価で最も高いとされていた。さらに、参考文献として海外の論文が1編と私の遺伝子型の紹介、提携する人間ドックの割引特典が案内されていた。

結果に困惑、不安産業の懸念

結果を知って感じたのは困惑だ。リスクを解釈するにはあまりに情報が少なく戸惑った。国際的な枠組みであるHapmapの説明はなく、日本人がどれだけ参加しているのかも分からない。参考文献も海外のものが1編のみで、日本人平均と比較したリスクがどれほど科学的に意味を持つのか不明だ。そのがん種は原因が不明のため予防的な行動も取りようがない。不安感が強い人なら、サイトで紹介されている人間ドックを申し込むかもしれない。そうした誘導を意図しているなら、まるで不安産業だ。

医科研に共同研究の事実について問い合わせたところ、現在、DeNAライフサイエンス社と「日本人DNA多型データを用いた日本人のための疾病リスク予測モデルの研究」を実施しているという。

申し込みの際に、試料と解析結果を「健康長寿社会に向けた研究」に利用する可否を記入する欄があり、私は同意した。しかし、親会社のDeNAが運営する医療情報サイトに医学的に根拠のない誤った内容が多く含まれていたという企業倫理を疑うニュースを見ると、私のデータが今後、健康長寿社会に寄与できるのかどうか、心もとなく感じている。

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