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(3)ギラン・バレー症候群の治療 ─免疫療法・予後予測モデルなど [特集:ギラン・バレー症候群 ─今わかっていること]

No.4834 (2016年12月17日発行) P.42

国分則人 (獨協医科大学神経内科准教授)

登録日: 2016-12-16

最終更新日: 2016-12-09

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  • 現在,ギラン・バレー症候群(GBS)に対する免疫療法は免疫グロブリン大量静注療法と血液浄化療法であり,これは2000年以降変わっていない

    現行の治療を行っても,発症後1年時点で1割以上の患者は重篤な後遺症を残している

    脱髄型・軸索型GBSは,ともに可能な限り早く治療を開始し,軸索変性を防ぐことがより良い予後につながると考えられる

    予後が悪い患者を早期に予測し,そこに医療資源を集中する目的で予後予測モデルが提唱されている

    1. ギラン・バレー症候群(GBS)治療の概況

    1 わが国では2000年以降,新規治療は導入されていない

    ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)は,免疫介在性の急性末梢神経障害である。基本的に経過は単相で,急性発症の後4週以内に症状はピークに達し,徐々に回復する。現在わが国では,免疫グロブリン大量静注療法が「歩行不能な患者」に,血液浄化療法が「支持があっても5m以上の歩行が不可能な患者」に保険適用となっており,これは国際的にも標準的である。 
    こうした免疫療法を行った場合,発症1年後の時点で完全回復する患者は約6割である1)。しかし,発症後6カ月時点で独歩可能な患者はおよそ82%であるにもかかわらず,発症1年後には84%にしか増えないことから,急性期にある程度の予後が決している。発症後1年以上を経て重篤な後遺症を残す患者は,約14%である1)。また,約4~5%の患者は合併症により死亡し,重症患者の20%は重篤な後遺症を残す1)2)。現在においてもGBSの治療は十分とは言えない。まず,現在までの治療方法の推移を概説する。

    2 副腎皮質ステロイドの効果は否定されている

    1950年代以降,病理学的研究からGBSは脱髄性根神経炎であると理解されるようになったことから3)4),副腎皮質ステロイド療法が積極的に行われるようになった。有効・無効の報告が相次ぎ,しばらくはこの状態が続いた。しかし,1970年代には経口副腎皮質ステロイドの5)6),1990年代にはパルス療法7)8)を含む副腎皮質ステロイドの有効性が否定された。

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