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(3)血清抗体検査の実力 [特集:そこが知りたい! インフルエンザ検査]

No.4830 (2016年11月19日発行) P.37

岸田典子 (国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室主任研究官)

登録日: 2016-11-18

最終更新日: 2016-11-15

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  • 血清抗体検査は,ウイルス特異的抗体が誘導されるまでに時間を要するため,発症時の感染診断に用いることはできない

    血清抗体検査は,過去にどのようなインフルエンザウイルスに感染したかといった感染の履歴を明らかにすることが可能である

    血清抗体の有無でウイルスに対する感受性を判断することができる

    1. 検査によって何がわかるか,その実力は?

    ウイルス抗原検出検査は発症時,即座に感染診断を下すことが可能であるのに対し,血清抗体検査はウイルス特異的抗体が誘導されるまでに時間を要するため,即座にウイルス感染を証明することは難しい。
    しかしながら,血清抗体検査は過去にどのようなインフルエンザウイルスに感染したかといった,感染の履歴を明らかにすることが可能である。

    2. 検査の原理・方法は?

    インフルエンザウイルスの抗体検査では,感染防御に関わる抗体を証明する赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition:HI)試験や中和(neutralization:NT)試験などが用いられる。

    1 HI試験

    インフルエンザウイルスにおけるHA(hemagglutinin)蛋白質の頭部は,赤血球と結合して凝集する赤血球凝集能を持つ。ウイルスのHA頭部と結合する抗体が血清中に存在する場合,U底の96ウェルプレートのウェル内でウイルス液と血清を混合・反応させたところに赤血球を加えると,ウイルスと抗体が既に結合しているため,ウイルスが赤血球に結合できず,赤血球はウェルの底の中心に集まって沈む。一方で,血清中にウイルスと結合する抗体が存在しない場合,ウイルスは赤血球と結合し,赤血球同士がウイルス粒子を介して架橋され,ウェル内の底全体を覆うように凝集像が見える(図1)。赤血球は,ヒトO型またはモルモットのものが一般的に用いられる。

      

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