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粒子線治療の保険収載 【小児がん・骨軟部腫瘍に対する粒子線治療が保険適用に】

No.4816 (2016年08月13日発行) P.52

髙橋 渉 (東京大学医学部附属病院放射線科)

登録日: 2016-08-13

最終更新日: 2016-10-30

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2016年の診療報酬改定で,切除不能骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療と,小児がんに対する陽子線治療が保険適用となった。
陽子線は体内標的部で線量のピークを形成し,それより深部の線量はほぼゼロになる物理特性(ブラッグピーク)を持つ。この優れた線量集中性により,有害事象の低減だけでなく,小児がんに対する放射線治療で問題となる晩期の成長障害や,二次発がんリスクの低減も期待できる。
重粒子線は陽子線同様のブラッグピークに加え,高い生物学的効果を持つため,通常の放射線治療の効果が乏しい腫瘍に対しても優れた治療効果を発揮する。特に,体幹部骨肉腫や脊索腫などの骨軟部腫瘍については,重粒子線治療の有用性が多く報告されている。
これまで先進医療として提供されてきた粒子線治療には,約300万円の患者負担が必要であった。若年発生も多い骨軟部腫瘍の患者や小児がん患児を持つ若い両親にとっては,高額な治療費が負担となり,適応があっても断念せざるをえない症例も少なくなかった。だが,今回の保険収載で患者負担が大きく軽減されるため,粒子線治療の普及に弾みがつくであろう。
国内に増えつつある粒子線治療施設の全症例を登録し,効果と安全性を確認していく枠組みも準備されつつある。頭頸部非扁平上皮癌,肺癌,肝細胞癌などについても粒子線治療の有用性が報告されており,今後の保険適用拡大が期待される。

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