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腫瘍の微小環境ががん治療に及ぼす影響【腫瘍組織特有の微小環境が個々のがん細胞の放射線抵抗性を左右する】

No.4897 (2018年03月03日発行) P.56

北原 規 (東海大学医学部付属八王子病院放射線治療科学 特任教授)

原田 浩 (京都大学放射線生物研究センター がん細胞生物学分野教授)

登録日: 2018-02-28

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  • 近年「微小環境」という用語を随所で耳にしますが,その詳細およびがん治療に及ぼす影響に関して京都大学・原田 浩先生にご教示をお願いします。

    【質問者】

    北原 規 東海大学医学部付属八王子病院放射線治療科学 特任教授


    【回答】

    悪性固形腫瘍内部では恒常的に炎症反応が惹起されており,その結果,免疫細胞の浸潤や血管新生,線維芽細胞の増殖が顕著にみられ,複雑な細胞社会が形成されています。また,酸素・栄養環境がきわめて多様であることもわかっています。こういった腫瘍組織特有の微小環境が個々のがん細胞の放射線抵抗性を左右することが報告されています。

    腫瘍内には,血管から十分な酸素が供給されない低酸素領域が存在します。低酸素領域は,がん細胞の増殖速度が腫瘍血管の形成速度を上回ること,およびがん細胞の酸素消費量が酸素供給量を上回ることによって,腫瘍血管から約70~100μm離れた領域に慢性的に生じることが知られています。また,腫瘍血管が脆弱かつ閉塞を繰り返していることに起因して,腫瘍血管近傍にも一過性に生じることがあります。X線に代表される電離放射線は,活性酸素種(各種のラジカル)を発生させてがん細胞のゲノムDNAを傷つけますが,酸素がラジカルを長寿命化すること,またDNA二重鎖切断部位を修復不能な損傷に変換することを理由に,放射線の殺細胞効果が酸素存在下で高まることがわかっています。これはすなわち,「腫瘍内の低酸素領域でがん細胞が比較的,放射線抵抗性であること」を意味します。

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