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肺癌に対する体幹部定位放射線治療【手術療法と同等の試験結果】

No.4904 (2018年04月21日発行) P.51

徳植公一 (東京医科大学放射線科主任教授)

登録日: 2018-04-23

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Ⅰ期非小細胞肺癌に対する体幹部定位放射線治療は,手術に代わる有効な治療法としてわが国が牽引してきた分野である。頭蓋内小病変の定位放射線治療が普及しはじめた頃に,わが国から体幹部の腫瘍にこの治療法の適応を拡大したⅠ期非小細胞肺癌の治療成績が報告された1)。さらに,日本放射線腫瘍グループの多施設試験2)および,そのほかの多くの第2相試験において,手術療法とほぼ同等の治療成績が得られることが示された。これらの試験は,脳血管障害,心筋梗塞などの医学的背景を持つ患者,あるいは手術を拒否した患者に対して施行されたものであった。

これに対してROSEL,STARSという手術可能Ⅰ期非小細胞肺癌に対する手術療法と定位放射線治療との比較試験が行われた。両試験とも症例集積が進まずに中止となったが,この2つの臨床試験のプール解析では,無病生存率は変わらないものの3年生存率は定位照射群で95%,手術群で79%と有意に定位放射線治療群が優れているという結果となった3)。これは比較試験でないため,依然として手術が標準治療であるが,Ⅰ期非小細胞肺癌に対して体幹部定位放射線治療は手術と遜色ない治療法と思われた。一方で,様々な角度から放射線を集中させると同時に,広い範囲に放射線をばらまく治療でもある。したがって,慢性呼吸器疾患等により肺全体の耐容線量が下がれば,その有用性が低下することに注意する必要があろう。

【文献】

1) Uematsu M, et al:Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;51(3):666-70.

2) Onishi H, et al:Cancer. 2004;101(7):1623-31.

3) Chang JY, et al:Lancet Oncol. 2015;16(6): 630-7.

【解説】

徳植公一 東京医科大学放射線科主任教授

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