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新しい創傷治療:急性創傷に対する局所陰圧閉鎖療法  【創閉鎖術までの期間短縮,シャワー浴が可能など多くの利点を有する】

No.4809 (2016年06月25日発行) P.51

岸邉美幸 (金沢医科大学形成外科准教授)

登録日: 2016-06-25

最終更新日: 2016-10-29

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局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)とは,皮膚潰瘍創や皮膚欠損創を陰圧環境下に置き,創の治癒促進を図る方法である。
外傷や手術で生じた急性創傷で,広範な組織欠損のため一次治癒が困難な場合や,創汚染があり感染の危険が高い場合,従来は開放創として洗浄や外用薬,創傷被覆材による治療が行われてきた。本法は,このような急性創傷に広く用いられるようになった。
創の止血を確認後,フォーム材を創形に合わせて採型して創面に置き,全体をドレープで被覆する。ドレープの一部に孔を開け,吸引チューブを装着し,専用の機器で一定の陰圧を保つことで,過剰な滲出液を除去しながら創面を適度な湿潤状態に保つ。良性肉芽の増生を促す効果があり,創閉鎖の手術(皮弁や植皮)を行うまでの期間が短縮される,創部を完全に密封するのでシャワー浴が可能となる,開放創が創外固定器に近接する場合の創管理も容易となる,週数回の交換でよいため,頻回なドレッシング交換に伴う疼痛が軽減され,処置に要する労力も削減できる,などの利点を有している。皮膚悪性腫瘍の切除後に病理検査の結果を待って再建術を行ったり,腱や筋肉が露出した創に肉芽組織を形成させ,植皮の生着に有利な移植床を形成するなど,近年,創傷治療の標準的治療として確立されつつある。

【参考】

▼ 平林慎一, 他, 編:形成外科治療手技全書Ⅲ 創傷外科. 波利井清紀, 他, 監. 克誠堂出版, 2015, p351-2.

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