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老衰【加齢性筋肉減少症が老衰の始まり】

No.4828 (2016年11月05日発行) P.49

遠藤英俊 (国立長寿医療研究センター内科総合診療部部長)

登録日: 2016-11-01

最終更新日: 2016-10-31

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老衰とは,『広辞苑』によれば「老いて心身の衰えること」とされている。言葉を換えれば加齢に伴い,または年齢に逆らえず機能が低下し,虚弱化し,限りなく死に近い状態をいう1)

老衰になることは,ある程度の年齢になり,基本的に死に至る特定の病気を持たない状態のまま,心身の機能が低下することを意味する。すなわち,死因が,外傷や病気などでなく,自然に亡くなった場合(自然死)のことをいう。生物学・医学的には個体を形成する細胞や組織の機能が老化に伴って低下し,恒常性の維持が不可能になることが原因である。

ただし,近年の医療技術の進歩により純然たる老衰が死因となることが少なくなっている。これは老齢による代謝・免疫・回復能力の不全による死因は本来老衰とされるべきであるが,診断上は肺炎・多臓器不全・脳卒中などの病死扱いとなることが多いためである。しかし,俗に言えば,高齢でさえあれば様々な病気があっても「老衰」と呼ばれることもあることから,十分に年をとり,自然で幸福な状況による死を「老衰」と言うこともある。

ところで,高齢者の老衰の始まりは加齢性筋肉減少症が最初ではないかと考えられている。すなわち,サルコペニアという,老化に伴って栄養や神経の加齢性変化が起き,結果として筋肉が減少し,握力が低下したり,筋肉量が減少することをいう。この結果として,歩くスピードが落ちたり,転びやすくなったりする。この状態を「虚弱」と言い,高齢者の様々な機能低下の原因となる。さらに数年を経て,病気や老衰の状態を迎えることになる。

【文献】

1) 遠藤英俊:内科. 2013;112(6):1161-3.

【解説】

遠藤英俊 国立長寿医療研究センター内科総合診療部部長

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