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新しい創傷治療:培養表皮移植を用いた創傷治療  【真皮組織構築後の移植により成績が飛躍的に向上】

No.4803 (2016年05月14日発行) P.50

川上重彦 (金沢医科大学形成外科教授)

登録日: 2016-05-14

最終更新日: 2016-10-26

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表皮細胞の大量培養法(培養表皮シートの作成)は,1970年代に確立し,80年代にはこの培養表皮シートを用いた創傷治療が試みられるようになった。主な治療対象は,移植に用いる自家皮膚を十分採取できないような広範囲深達性熱傷例で,小範囲の自家皮膚から大量の培養表皮シートを作成し,これを移植して熱傷創を閉鎖する方法である(文献1)。当初は培養表皮の生着率が悪く,標準的治療法としては普及に至らなかった。その後,培養表皮の生着には真皮組織が不可欠であることが明らかとなり,あらかじめ真皮組織を熱傷創に構築してから培養表皮を移植する手法が行われるようになり,成績は飛躍的に向上した。
真皮組織を構築する手法としては以下の方法がある。同種皮膚を熱傷創に移植し,同種皮膚が拒絶されずに生着している移植後2~3週目に表層の同種表皮を削除し,同種皮膚の真皮上に培養自家表皮を移植する。同種真皮には抗原性が乏しいことを利用した方法である。また,創面に人工真皮を貼付し,そのコラーゲンスポンジ内に線維芽細胞や血管内皮細胞が侵入し,真皮様組織が構築された時点で培養自家表皮移植を行う方法もある。
近年,培養表皮シートは商品化され,本治療法も保険適用が認められ,広範囲熱傷治療の標準的治療法として確立されつつある。今後はほかの創傷にも適応が拡大されると思われる。

【文献】


1) Cuono C, et al:Lancet.1986;1(8490):1123-4.

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