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甲状腺未分化癌に対する分子標的治療薬による治療  【レンバチニブの登場によりstage ⅣCは治療不可能から治療可能に】

No.4801 (2016年04月30日発行) P.56

岩崎博幸 (神奈川県立がんセンター乳腺・内分泌外科 部長)

登録日: 2016-04-30

最終更新日: 2016-10-26

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甲状腺未分化癌は甲状腺癌の約1%にみられ,診断後の平均生存期間は3~6カ月である。60歳以上に多く,分化癌から未分化転化したものが多い。『甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版』(文献1)では,長期生存例は,遠隔転移がなく根治手術がなされたものが多い,としている。
わが国では甲状腺未分化癌研究コンソーシアムが,2012年4月からweekly paclitaxelによる化学療法の忍容性,安全性に関する前向き研究をスタートして,化学療法の有効性を検証している。しかしながら,遠隔転移のあるstage ⅣCの患者の場合は依然治療不可能であり,多くは緩和医療の対象であった。
15年5月にレンバチニブ(レンビマR)が発売されて,未分化癌にも保険適用となった。臨床試験の成績では,甲状腺未分化癌の奏効率は27.3%(n=11)(文献2)であった。分子標的治療薬を開始した場合,副作用で継続不可能な場合やprogressive disease(PD)となった場合以外は,内服を継続することで腫瘍の増殖制御が得られるため,将来的に縮小しても手術という選択肢はないが,stage ⅣCの患者に対しても治療の選択肢ができたことは大きな進歩である。

【文献】


1) 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会, 編:甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版. 金原出版, 2010.
2) Takahashi S, et al:ESMO meeting abstract. 2014, p4933.

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