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バセドウ病に対する手術の変遷  【手術は甲状腺亜全摘術から全摘術へ,治療目標は寛解から治癒へ】

No.4798 (2016年04月09日発行) P.54

岩崎博幸 (神奈川県立がんセンター乳腺・内分泌外科 部長)

登録日: 2016-04-09

最終更新日: 2016-10-26

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バセドウ病治療は抗甲状腺薬による内科的治療が第一選択であり,寛解が得られない場合や再燃を繰り返す場合に,次の治療選択として,放射性ヨード治療や手術がある。
『バセドウ病治療ガイドライン 2011』(文献1)での手術適応は,甲状腺癌などの腫瘍を合併した患者,抗甲状腺薬が使用できず,かつ131I内服療法を希望しない患者,妊娠中に副作用などのため抗甲状腺薬が使えなくなった患者,であり,早期の寛解を希望する患者,甲状腺腫が大きい患者,服薬コンプライアンスが悪い患者にもしばしば手術が選択される,と記されている。
バセドウ病手術は1880年代に始められ,1920年代からは甲状腺亜全摘術が標準術式となった。54年に放射性ヨード治療が開始された後,手術症例は減少し,2000年以降は難治性,大きな甲状腺腫に手術が選択されるようになった。そして,甲状腺亜全摘後に,長期間甲状腺機能を正常に維持できるのは約半数であること,亜全摘より全摘のほうがTSHレセプター抗体(TRAb)の低下が期待できること,から全摘が選択されるようになった。加えて,副甲状腺はin situで温存するか,細切して筋肉内に自家移植することで,永続的副甲状腺機能低下は皆無となり,術中に神経刺激装置で反回神経や上喉頭神経麻痺のないことを確認することで,安全に甲状腺全摘が行えるようになった。

【文献】


1) 日本甲状腺学会, 編:バセドウ病治療ガイドライン2011. 南江堂, 2011.

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