株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

フィブリン糊を使用しない鼓室内結合組織詰め込みによる短期滞在型鼓膜再生術  【低侵襲,低コストで聴力改善率は約85%】

No.4791 (2016年02月20日発行) P.54

中嶋正人 (埼玉医科大学耳鼻咽喉科講師)

登録日: 2016-02-20

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

非真珠腫性中心性鼓膜穿孔の閉鎖術は,従来,一般的には,比較的小穿孔に対しては接着法が,大穿孔に対しては鼓室形成術Ⅰ型が選択されていたと考える。前者はフィブリン糊が必須で,後者は短期滞在手術が困難な上,術後耳内操作が必要で,両者とも鼻かみやくしゃみの禁止などの制限があった。
当科では,縁を新鮮化した穿孔から,経外耳道的に,耳後部などから採取した十分量の皮下結合組織を鼓室内に充満するように詰め込むのみとする鼓膜再生術を施行している。十分量の結合組織は完全退縮・消失まで,施術直後から1~2カ月以上穿孔縁に密着し,鼓膜再生の橋渡しの役目を果たす。組織は穿孔径より大きく,鼓室内に充満するため,くしゃみや鼻かみ程度では外耳道側や鼓室内に脱落しない。また,組織の退縮が進み,鼓室に空間が生じる時期には鼓膜と組織が一体化しているので,やはり鼓室側に脱落しない。
本法の利点は,(1)穿孔の径,部位を問わない,(2)フィブリン糊が不要,(3)術後耳内処置が不要,(4)鼻かみ,くしゃみが可,(5)簡易,低侵襲,(6)低コスト,(7)特別な医療材料や器具が不要,などである。初回手術の穿孔閉鎖率,日本耳科学会基準の聴力改善率でいずれも約85%である。鼓膜石灰化部分切除によるパッチテスト陰性例での聴力改善,耳管機能不全例での鼓膜穿孔縮小手術,耳介軟骨コルメラ付きの結合組織挿入での耳内Ⅲcによる伝音連鎖再建などの応用も可能である。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top