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大動脈周囲リンパ節転移を伴う胃癌における手術療法 【長期生存例は選択的な大動脈周囲リンパ節郭清例で認められる】

No.4788 (2016年01月30日発行) P.58

三重野浩朗 (北里大学外科)

山下継史 (北里大学外科講師)

渡邊昌彦 (北里大学外科教授)

登録日: 2016-01-30

最終更新日: 2016-10-26

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胃癌における大動脈周囲リンパ節転移は,『胃癌取扱い規約』においてStage Ⅳの因子であり,初回治療としては手術ではなく化学療法が選択されることが多い。化学療法単独での予後は不良で,治癒する例はほとんど認めないが,近年胃癌に対する多剤併用化学療法の開発が進み,化学療法著効例に対して手術治療が選択される機会も多い。大動脈周囲リンパ節郭清に関しては,多施設での比較試験において進行胃癌に対する予防的郭清の効果は否定されたが(文献1),転移例に対する治療的郭清や化学療法後の切除に関しては定かなエビデンスが存在しない。
単アームの臨床試験として行われた,大動脈周囲リンパ節を含む高度リンパ節転移併存胃癌に対する術前化学療法後の切除では,根治切除率82%,3年・5年生存率が59%・53%と良好な結果であった(文献2)。筆者らの施設でも化学療法後に奏効が得られた症例では,選択的な大動脈周囲リンパ節郭清を含めた胃切除を行っている。長期生存例は郭清を行った症例のみに認められていることから,集学的治療の中における手術療法の有用性が期待される。
今後は分子標的治療薬も含めた,より有効性の高いレジメン開発も進むと考えられ,より個別化された集学的治療の進歩によって,高度進行胃癌に対する根治手術の適応が拡大していくことが期待される。

【文献】


1) Sasako M, et al:N Engl J Med. 2008;359(5):453-62.
2) Tsuburaya A, et al:Br J Surg. 2014;101(6):653-60.

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