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乳児血管腫におけるプロプラノロール治療 【重篤な副作用が少なく速やかな効果が認められていることから,プロプラノロールはステロイドに代わる第一選択薬へ】

No.4777 (2015年11月14日発行) P.52

長尾宗朝 (岩手医科大学形成外科)

柏 克彦 (岩手医科大学形成外科特任教授)

小林誠一郎 (岩手医科大学形成外科教授)

登録日: 2015-11-14

最終更新日: 2016-10-26

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乳児血管腫,いわゆる苺状血管腫は,乳幼児の良性腫瘍の中で最多の腫瘍である。一般的には,生後7日頃に発赤に気がつき,3~6カ月で急速に増大する増殖期を経て,10歳頃までに自然退縮が期待される。このため,当面は積極的な治療はなされず,保存的に「wait & see」されるのが基本である。しかし,その増殖が眼瞼周囲や口唇,声門下などに生じた場合には,それぞれ遮断性の弱視や哺乳障害,気道狭窄などの合併症が危惧されることから,部位や大きさに応じて積極的な治療が要求される。また,皮膚潰瘍が生じた場合には,頻回の出血や瘢痕形成による醜形の遺残が懸念される。これまで,このような症例にはステロイド内服や局所注射,レーザー照射,あるいは外科的切除などの治療が行われてきた。
2008年,乳児血管腫患者においてプロプラノロールの内服療法が有効であったとする報告(文献1)がなされ,以後の多施設での追試における良好な成績により,その効果が裏づけられた(文献2)。プロプラノロール内服による副作用として低血圧や低血糖の報告はあるものの,重篤な副作用の報告も少なく,速やかな腫瘍の退縮効果が認められている。そのため,合併症が危惧されるような本症の治療においては,ステロイドに代わる第一選択となりつつある。

【文献】


1) Leaute-Labreze C, et al:N Engl J Med. 2008;358(24):2649-51.
2) 木下佳保里, 他:形成外科. 2011;54(6):669-76.

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