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甲状腺内視鏡手術の現状と展開 【保険収載を考慮した場合,基本となる術式の統一,一般化が不可欠】

No.4777 (2015年11月14日発行) P.52

中村 泉 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学准教授)

登録日: 2015-11-14

最終更新日: 2016-10-26

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頸部に対する内視鏡外科手術は1996年にGagnerが副甲状腺を摘出したことに始まり,甲状腺に対しては翌97年にHuscherらが初めて行った。以後,若い女性を多く対象とする疾患の特性上,整容性を求める声に応えて発展してきた。
わが国では高度先進医療の申請が必要であり,内視鏡下頸部良性腫瘍摘出術は9施設で行われており,そのうち甲状腺悪性腫瘍も適応にする施設が5つある。その手技は,アプローチも前胸部,腋窩,乳輪など様々であり,完全内視鏡下手術(TVANS)を行うか,小切開を加えた内視鏡補助下手術(VANS)を選択するかなど,施設ごとの判断で行われているのが現状である。
今後の均てん化や保険収載を考慮すると手技の統一,一般化が不可欠であり,技術認定が可能となるように,基本となる術式を詰めていくことが認知される近道と考える。本法は操作腔作成のため剥離範囲の拡大を要する。剝離部の知覚低下を認めることもあり,整容性にまさるメリットを明確にしていくことも重要である。
海外,特に韓国ではロボット支援下甲状腺切除が発展している。各国の臨床研究においてもロボットの優位性が示され,合併症の確率も内視鏡下手術と比較し同等か低いとされている。特に,内視鏡下手術の場合に接線となる上甲状腺動静脈の処理や,愛護的な操作が必要な反回神経周囲の剝離で,その有用性が際立つ。今後,わが国での導入にあたっては,内視鏡下手術の一般化と慎重な臨床研究を行い,コストも考慮した上で行われるべきと考える。

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