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副作用に期待?吸入麻酔薬による心保護作用 【冠動脈バイパス術では吸入麻酔薬が予後を改善する可能性が高い】

No.4776 (2015年11月07日発行) P.57

三尾 寧 (東京慈恵会医科大学麻酔科准教授)

登録日: 2015-11-07

最終更新日: 2016-10-26

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揮発性吸入麻酔薬の主たる使用目的は,鎮静を得ることにある。薬剤の本来の目的以外の作用を副作用とするならば,鎮静以外の作用は副作用ということになる。吸入麻酔薬は心筋虚血再灌流障害に対する保護作用という「副作用」を持つことが明らかになり,この作用を期待して同薬剤が用いられることがある。
心筋虚血の発生前,もしくは虚血後早期に吸入麻酔薬を投与することにより,再灌流後の心収縮能が維持され,前者は麻酔薬プレコンディショニング,後者はポストコンディショニングと呼ばれている。動物実験においては明確な心保護効果が観察され,作用機序に関しても解明が進んでいる。吸入麻酔薬が細胞内情報伝達経路を賦活化し,エネルギー産生を担うミトコンドリア機能が温存されることが,心機能の保持につながるとされている。
臨床においてもこれらコンディショニング効果に関し,多くの研究が行われている。しかしながら,多くの合併症を持った患者が対象となることから,併用薬の影響や患者背景の多様性,さらには大規模な前向き研究が困難なこともあり,動物実験に比べ明確な心保護効果は示されていない。
現在のところ各種ガイドラインにおいて,心筋虚血の危険を持つ手術患者に対して積極的に吸入麻酔薬の使用を推奨しているものはなく,非心臓手術では吸入麻酔薬の心保護効果に関する有用性は示されていない。その一方で,冠動脈バイパス術においては吸入麻酔薬の使用が予後を改善する可能性が高いとされ,心臓手術での吸入麻酔薬の使用の有用性が唱えられている。

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