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副腎腫瘍に対する腹腔鏡手術の適応と周術期合併症

No.4774 (2015年10月24日発行) P.52

福島俊彦 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学准教授)

登録日: 2015-10-24

最終更新日: 2016-10-26

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現在,腹腔鏡下副腎摘除術は,良性腫瘍に対して第一選択となる標準術式として推奨されている。良性の内分泌活性腫瘍が適応となり,腫瘍径の上限については,技術的困難さや悪性腫瘍の可能性から,12cm以下を適応としている。偶発腫瘍のうち内分泌非活性腫瘍に関しては,腹腔鏡手術が普及した影響から,4cm以上か画像上悪性腫瘍を疑う場合に適応としている。小さい限局性副腎皮質癌に対する腹腔鏡手術と開腹手術の成績はほぼ同等とする報告もあるが,腹腔鏡手術は開腹手術と比べ断端陽性率やがん性腹膜炎発生率が高いとする報告もあり,副腎皮質癌に対する適応に関してはcontroversialである。画像上,局所浸潤やリンパ節転移を認める場合は禁忌とされ,開腹手術が選択されている(文献1)。
3081例の集計によれば,術中および術後合併症を含む周術期合併症の発生率は8.4%で,術中合併症としては下大静脈,副腎静脈,腎静脈などの血管損傷による出血(1.8%)が最も多く,開腹手術移行率は3.9%と報告されている。
消化器腹腔鏡手術と同様に,整容性と低侵襲性を追求したシングルポートによる単孔式手術も,副腎腹腔鏡手術に応用されている。従前の腹腔鏡手術に比べ,整容性に優れ,術後の疼痛を軽減できる可能性が報告されている。一方,手技の難度が高いため,手術時間が長いことも指摘されている。

【文献】


1) 日本内視鏡外科学会, 編:技術認定取得者のための内視鏡外科診療ガイドライン2014年版. 日本内視鏡外科学会, 2014, p123-6.

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