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人工角膜移植の長短

No.4762 (2015年08月01日発行) P.62

大本雅弘 (岡山大学眼科診療講師)

登録日: 2015-08-01

最終更新日: 2016-10-26

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角膜移植片は免疫寛容を受けることが知られている。拒絶反応は10~20%程度にしか発生しないが,一度拒絶された症例では再移植を行っても移植片不全に陥るリスクが高く,透明治癒を得られない症例も少なくない。このようなハイリスク例には,今後iPSを用いた再生医療に期待がかかるものの,当分は人工角膜を考慮すべきであろう。
現在まで様々な人工角膜が実用化されているが,最も広く用いられているものは,Boston Ke-ratoprosthesis(Boston KPro)である。これは米国・ハーバード大学のClaes Dohlmanらが開発したもので,1992年にFDAの認可を受けて以来,合併症に対応する形で仕様変更を受けながら,全世界で5000眼以上に移植されている。アクリル樹脂の光学部とチタン製のバックプレートでドナー角膜を挾み,これを通常の角膜移植のように縫着する。術式は従来の移植とほぼ同じで,生着率が高く,視力成績も良い。
角膜で計測する眼圧が測定できなくなるため,角膜移植後の好発合併症である緑内障の治療が遅れるという問題もあるが,眼圧センサーを内蔵したものが米国・マサチューセッツ工科大学と共同で開発されており,この問題も早晩解決されるであろう。極小のKProを用いたマウスでの移植実験も進められているため(文献1),合併症はさらに減少すると予想される。

【文献】


1) Crnej A, et al:Invest Ophthalmol Vis Sci. 2014;55(6):3681-5.

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