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脳波モニターと麻酔深度

No.4759 (2015年07月11日発行) P.53

長谷川麻衣子 (鹿児島大学病院手術部講師)

上村裕一 (鹿児島大学麻酔・蘇生学教授)

登録日: 2015-07-11

最終更新日: 2016-10-26

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脳波モニターは脳波を数値解析して,麻酔中の鎮静レベルをBIS(bispectral index)値0~100で評価するもので,当初,術中覚醒を予防する目的で開発された。詳しいアルゴリズムについては公開されていないものの,適正な麻酔深度はBIS値40~60の間とされている。日本麻酔科学会の「安全な麻酔のためのモニター指針」では,2014年改訂版から脳波モニターの装着が追記されたばかりである(文献1)。
プロポフォールのように,至適効果部位濃度の個人差が大きく,直接血中濃度を測定できない静脈麻酔薬や,デスフルランのように高濃度で投与する吸入麻酔薬を使用する際には,有効な指標となる。また,手術中のBIS低値,低血圧,低濃度の揮発性吸入麻酔薬の,いわゆる“triple low state”は術後死亡率との相関があることが報告(文献2)されており,手術中の麻酔深度のみでなく,術後予後との関連も近年示唆されている。しかし,術中覚醒の発生率は,BISを指標とした群では0.24%,呼気吸入麻酔薬濃度を指標とした群では0.07%と,術中覚醒頻度に差を認めなかったとの指摘もあり(文献3),ほかのモニタリングの指標と併せて総合的に評価すべきである。

【文献】


1) 日本麻酔科学会ホームページ. [http://www.anesth.or.jp/]
2) Sessler DI, et al:Anesthesiology. 2012;116(6):1195-203.
3) Avidan MS, et al:N Engl J Med. 2011;365(7):591-600.

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