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多角的鎮痛法とは?

No.5217 (2024年04月20日発行) P.54

天谷文昌 (京都府立医科大学疼痛・緩和医療学教授)

川股知之 (和歌山県立医科大学麻酔科学教室教授)

登録日: 2024-04-18

最終更新日: 2024-04-16

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  • 多角的鎮痛法とはどのような鎮痛法でしょうか。
    和歌山県立医科大学・川股知之先生にご解説をお願いします。

    【質問者】天谷文昌 京都府立医科大学疼痛・緩和医療学教授


    【回答】

    【作用機序の異なる薬剤,あるいは異なる投与法を組み合わせた鎮痛法である】

    多角的鎮痛法とは,作用機序や作用部位の異なる複数の薬剤あるいは鎮痛法を組み合わせた疼痛管理方法です。多角的鎮痛法は新しい用語ではなく,PubMedで検索すると1992年から散見されます1)

    多角的鎮痛法の目的は,副作用の少ない優れた鎮痛の提供です。単独の薬物で十分な鎮痛を得ようとすると投与量が多くなり,副作用が発現します。一方で,作用機序の異なる複数の薬物を用いると,相乗効果により各々の薬物投与量を減じて,単独投与と同等もしくはそれ以上の鎮痛効果を得ることができます。それによって,各々の薬物に起因する副作用を減ずることができます。

    以下,手術後痛を例に挙げて説明します。手術後痛は,痛みの機序から侵害受容性痛に分類されます。すなわち,末梢神経終末の痛み受容体が活性化されて活動電位が生じ,末梢神経→脊髄神経→脳神経と伝達され,痛みが受容されます。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は末梢組織でプロスタグランジン合成酵素活性を阻害してプロスタグランジンが活動電位の発生を抑制することにより,一方,オピオイドは神経間のシナプス伝達を抑制することにより,鎮痛効果を発揮します。したがって,理論的にはNSAIDsとオピオイドの併用により相乗的な鎮痛効果が期待できます。

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